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認知症の相続人

 認知症の相続人がいる場合には、相続手続きに関連する多くの問題や制約が発生します。以下に、その問題点を簡単にまとめてみましょう:

  • 遺産分割協議ができない: 認知症の相続人がいる場合、遺産分割協議を行うことが難しくなります。認知症状態では意思表明ができないため、全ての相続人の合意が得られず、遺産の凍結が解除されないままとなります。
  • 代筆が無効で罰せられる可能性: 認知症の相続人が書類に署名できない場合、他の相続人が代筆することは無効であり、法的な罪に問われる恐れがあります。代筆を試みることは法的リスクを伴います。
  • 相続放棄ができない: 認知症の相続人は法律行為ができなくなるため、相続放棄を申し立てることもできません。他の相続人が代理で相続放棄を申し立てても、家庭裁判所からは受理されないことがあります。
  • 後見人の選任が必要: 遺産分割協議を進めるためには、認知症の相続人のために後見人を選任する必要があります。後見人は法的な手続きが必要で、時間を要します。
  • 後見人に専門家が選ばれる可能性が高い: 家庭裁判所によって後見人が選ばれる際、親族が選ばれる確率は低い場合があります。専門家が後見人として選ばれることが一般的で、その専門家は報酬を受け取ることがあります。
  • 後見人の主要な使命は財産保護: 後見人の主要な役割は認知症の相続人の財産を守ることであり、相続の分配に関しては法定相続分を優先します。子どもなど他の相続人が望む分配に対しては柔軟性が低く、後見人は法的義務に従います。
  • 法定相続分で分配する場合の問題: 法定相続分に従って分配する場合、不動産や預貯金に関して制約が生じる可能性があります。共有状態の不動産は売却や賃貸が難しく、一定額を超える預貯金は払戻しできない場合があります。また、相続税の特例の利用も制約されることがあります。

 認知症の相続人がいる場合、相続の手続きや資産分割は複雑で時間がかかることがあり、法的なアドバイスを受けることが重要です。弁護士や司法書士に相談し、適切な手続きを進めることを検討してください。