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土地の所有権に疑念がありながらも

 この判決は、土地の所有権に疑念がありながらも、その取引の危険性を告知しなかった媒介業者に対して、損害賠償を命じた事例です。

 

事案の概要:

  • 業者Yが業者Aから土地の売却を依頼される。
  • Yが確認したところ、土地の所有権がAから法人Bに移転されており、その経緯に疑念があった。
  • 買主X1とX2がYの媒介で土地を購入し、所有権移転登記を受けるが、後に真の所有者の相続人による訴訟により登記が抹消される。

 

判決の要旨:

  • 仲介業者には、売主が本物の所有者であるかどうかの確認義務がある。
  • 売主の所有権に疑問がある場合、媒介業者はその経緯を調査し、確認を行うべきであり、確認ができない場合は少なくとも買主に危険性について注意・助言する義務がある。
  • 媒介業者Yは、所有権の帰属に疑念がありながら確認を行わず、買主に取引の危険性について告知しなかったため、注意義務を欠いていた。
  • 結果として、Yが真の所有者でない者と契約を結ばせたため、Yは買主Xらが被った損害を賠償する責任を負う。

 

まとめ:

  • 物件の所有権の経緯に不自然な点がある場合、媒介業者は調査し、確認を行い、疑問が解消されない場合は注意を喚起するべき。
  • 登記官が偽造に気付かず、虚偽の所有権移転登記を行ったことが明らかになり、国にも損害賠償責任が認められた。