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入居者が自殺すると、半分に減額

事案の概要:

  • 平成11年3月、業者Xが一括賃借しているマンションの一室を、期間2年、賃料月額4万8千円でYに転貸。
  • 本件貸室は、Yの従業員であるAが住居として使用しており、Xが賃貸する前からYに対して賃貸されていた。
  • 平成13年1月、Aが自殺。翌2月にXとYが賃貸借契約を解約し、Yが本件貸室を明け渡す。
  • Xは以後10年間にわたり従前賃料の半分でしか賃貸できなくなり、損害(得べかりし利益の喪失)を受け、Yに損害賠償を求める。

判決の要旨:

  • 貸室で入居者が自殺すると、通常人から見て心理的に嫌悪すべき事由(心理的瑕疵)があるため、通常の賃料よりも減額された賃料でしか賃貸できない。
  • YはXに対し、善良なる管理者の注意をもって貸室を使用・保存すべき債務を負っており、その債務には心理的に嫌悪すべき事由を発生させないようにする義務が含まれる。
  • Aが自殺したことにより、Yに債務不履行があったと認められる。
  • 心理的瑕疵は年月の経過とともに減少し、本件貸室が大都市に所在することを考慮し、2年経過すると瑕疵と評することはできなくなる。
  • Yは、Xが平成13年6月から2年間、1年間当たり24万円の得べかりし利益を喪失する被害を受けたので、その損害の現価から、中間利息を控除した43万円余を支払うべき。

まとめ:

  • 本判決は、自殺事故の心理的瑕疵の減少に関して一例を示しており、心理的瑕疵が減少する要因は事故の周辺状況により異なることを考慮すべきである。