生前贈与の基本
生前贈与とは、個人が生前に自分の財産を無償で他の人(受贈者)に渡す行為を指します。
この制度は相続税対策や遺産分割におけるトラブルを回避するために活用されることが多いです。
生前贈与のポイント
- 贈与者と受贈者:
財産を贈与する人を「贈与者」、贈与を受ける人を「受贈者」と呼びます。
- 贈与税:
生前贈与には贈与税がかかりますが、1年間に贈与を受けた合計額が110万円までであれば基礎控除の範囲内となり、贈与税は課税されません。
- 贈与の相手:
生前贈与の相手に特別な制限はありません。相続人以外の第三者や法人にも贈与できます。
- 贈与の方法:
「財産をあげます」「財産をもらいます」といった合意によって成立します。
口頭の合意だけで成立しますが、後のトラブルを避けるために契約書を作成することが望ましいです。
- 生前贈与の取り戻し
相続開始後に特定の相続人が多額の生前贈与を受けていたことが判明した場合、他の相続人は不満を持つことがあるでしょう。
このような場合、まず確認すべきは「生前贈与が特別受益にあたるか」という点です。
- 特別受益とは
特別受益とは、相続人が被相続人から受けた特別な利益を指します。
生前贈与のうち、以下のようなものが特別受益の対象となります。
- 婚姻のための贈与
- 養子縁組のための贈与
- 生計の資本としての贈与
特別受益に該当する贈与がある場合、遺産分割時にその特別受益の金額を考慮して相続分を決定することができます。
これを「特別受益の持ち戻し」といいます。
特別受益の持ち戻しの計算例
例として、以下のようなケースを考えます。
- 相続財産: 4,000万円
- 生前贈与: 長女に1,000万円
- 相続人: 長男と長女
- この場合、特別受益の持ち戻しにより、遺産分割の基準額を計算します。
全体の遺産額:
4,000万円(相続財産) + 1,000万円(生前贈与) = 5,000万円
具体的相続分:
- 長男の相続分: 5,000万円 × 1/2 = 2,500万円
- 長女の相続分: 5,000万円 × 1/2 - 1,000万円(生前贈与) = 1,500万円
- この計算により、長男が2,500万円、長女が1,500万円を相続することになります。
特別受益の持ち戻しを行わなければ、長男と長女はそれぞれ2,000万円を相続することになりますが、特別受益の持ち戻しにより公平に遺産分割が行われることがわかります。
生前贈与に関する注意点
特別受益の主張:
特別受益の主張は他の相続人からの反発を招く可能性があります。
そのため、話し合いで解決できない場合は、家庭裁判所での調停や審判を通じて解決を図ることが必要です。
贈与税:
生前贈与には贈与税がかかるため、税理士など専門家のアドバイスを受けることが重要です。
遺言書の活用:
生前贈与だけでなく、遺言書を作成することで遺産分割の方法を明確にし、トラブルを未然に防ぐことができます。
まとめ
生前贈与は相続税対策や遺産分割のトラブル回避に有効な手段ですが、特別受益として考慮される場合があるため、事前に適切な対策を講じることが重要です。
また、相続開始後に特別受益の持ち戻しを主張することで、相続人間の公平な遺産分割を実現することができます。
専門家のアドバイスを受けながら、適切な対応を進めることが望ましいです。
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