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親が認知症になると、財産管理に関して

 親が認知症になると、財産管理に関していくつかの不都合が生じることがあります。

 主なものとしては、以下の点が挙げられます。

 

1. 銀行口座の凍結

 親が認知症になった場合、銀行はその判断能力の低下を考慮して、親の口座を凍結することがあります。

 これにより、以下の操作が制限されます。

  • 預金の引き出し
  • 定期預金の解約
  • 貸し金庫の開錠
  • 公共料金の引き落とし

 

2. 遺言書の作成ができない

 認知症が進行すると、親は有効な遺言書を作成するための「意思能力」が欠けると判断される可能性があり、その場合、遺言書の作成ができなくなります。

 結果として、親の財産分与に関する意思が反映されず、相続トラブルに発展することがあります。

 

3. 不動産の売却ができない

 認知症の親が所有する不動産を売却することは難しくなります。

 法律行為の当事者が意思能力を持たない場合、その行為(不動産の売却など)は無効とされるため、所有者である親の意思能力が失われた場合、売却手続きが進められません。

 

4. 法定後見制度を利用する場合

 親が認知症になった後でも、不動産の売却や財産の管理を行うために「法定後見制度」を利用することが可能です。

 この制度では、家庭裁判所が親のために後見人を選任し、後見人が親の財産管理や法律行為を代行します。

 不動産を売却する場合、後見人は家庭裁判所の許可を得る必要があります。

 

5. 家族信託制度の利用

 親が認知症になる前に、家族信託制度を利用することも対策の一つです。

 信頼できる家族に財産の管理・処分を託すことで、親が認知症になっても財産管理がスムーズに行えるようになります。

 

6. 詐欺被害のリスク

 認知症の親は、判断能力が低下しているため、悪徳業者や詐欺のターゲットになりやすく、高額な商品を購入させられたり、安価で財産を売却させられたりするリスクが高まります。

 

 以上の点を踏まえて、親が認知症になる前に、信託制度や遺言書の作成、法定後見制度の利用などを検討することが重要です。

 また、親の財産管理や不動産の売却をスムーズに行うためには、早めの準備が必要です。