住宅の立ち退き料についての計算方法を解説します。
立ち退き料は主に以下の方法で計算されます。
1. 収益還元方式(差額賃料還元方式)
この方法では、移転先の賃料と現在の賃料の差額に基づいて立ち退き料を計算します。
計算式:借家権=(移転先の実際支払い賃料−現在の実際支払い賃料)×複利年金現価率
移転先での賃料差額を1〜2年分の現在価値に割り戻して補償額を決定します。
2. 割合方式
不動産の価格に基づいて借家権を求める方法です。
計算式:借家権=(土地価格×借地権割合×借家権割合)+(建物価格×借家権割合)
借地権割合や借家権割合は相続税路線価で規定されることが多いです。
3. 収益価格控除方式
自用としての価格から借家としての価格を差し引く方法です。
計算式:借家権=自用としての土地建物価格−借家としての土地建物価格
貸すことで価値が落ちている場合、貸さない場合との差額が借家権に相当します。
4. 比準方式
借家権の取引事例に基づいて計算しますが、市場で取引されることは少ないため、概念的な求め方となります。
計算式:借家権=借家権の事例価格×事例と比較した各要因比較
5. 実際の立ち退き料をシミュレーション
立ち退き料の実際の計算は以下の費用を積み上げて求めることが一般的です。
- 引っ越し料:
必要トラック台数 × 1台あたりのトラック単価
- 仲介手数料:
周辺における標準家賃の1ヶ月分
- 家賃増加分等
:(周辺における標準家賃 - 現在の家賃) × 家賃差額補償月数
- 礼金:
周辺における標準家賃 × 周辺における標準礼金月数
- 敷金の不足分:
周辺における標準家賃 × 周辺における標準敷金月数 - 現在の物件からの返還敷金額
立ち退き料の試算・シミュレーション
例として、以下の条件で試算します。
- 引っ越し代: 13万円
- 現在の家賃: 15万円
- 現在の預かっている敷金: 30万円
- 周辺における標準家賃: 17万円
- 周辺における標準礼金月数: 1ヶ月
- 周辺における標準敷金月数: 2ヶ月
- 家賃差額補償月数: 12ヶ月
試算結果:
- 引っ越し料: 13万円
- 仲介手数料: 17万円
- 家賃増加分等:
- 家賃増加分 = (17万円 - 15万円) × 12ヶ月 = 24万円
- 礼金 = 17万円
- 敷金の不足分 = 17万円 × 2ヶ月 - 30万円 = 4万円
- 家賃増加分等 = 24万円 + 17万円 + 4万円 = 45万円
- 立ち退き料 = 13万円 + 17万円 + 45万円 = 75万円
店舗(テナント)の立ち退き料
店舗の立ち退き料は以下の補償で構成されます。
- 工作物補償: 内装工事費用
- 動産移転補償: 店舗内の動産移転費用
- 借家人補償: 新店舗の家賃差額補償
- 移転雑費補償: 移転に伴う付帯費用
- 営業休止補償: 休業期間中の損失
立ち退き料を安くする方法
立ち退き料を安くする方法には以下のようなものがあります。
- 入居者数が少なくなってから着手する
- 定期借家契約への切り替えを打診する
- 代替物件を提供する
- 用法違反等の解除事由を確認する
- 誠意をもって交渉する
- 原状回復を免除する
- 敷金を先に返金する
- 退去までの賃料を免除する
- 再入居を確約する
- 裁判は避ける
これらの方法を使って立ち退き料を調整することができます。
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