信用保証協会の保証契約の意思表示の要素の錯誤
(平成28年1月12日最高裁)
事件番号 平成25(受)1195
この裁判は、信用保証協会が保証契約を結んだ後に、主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合、保証契約の意思表示に錯誤があるかどうかについて争われたものです。
最高裁の見解を以下に整理します。
主なポイント
- 事案の背景:
信用保証協会が金融機関との間で保証契約を結び、その後金融機関が融資を実行しました。
しかし、融資実行後に主債務者が反社会的勢力であることが判明しました。
- 信用保証協会の立場:
信用保証協会は、主債務者が反社会的勢力でないことを前提に保証契約を締結していたため、主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合、保証契約の意思表示に動機の錯誤があると主張しました。
- 最高裁の判断基準:
最高裁は、意思表示における動機の錯誤が法律行為の要素の錯誤として無効を主張するためには、以下の条件が必要であるとしました。
「その動機が相手方に表示されて法律行為の内容となること。」
もし錯誤がなかったならば、表意者がその意思表示をしなかったと認められる場合であること。
- 動機の表示の重要性:
動機は、それが相手方に表示された場合であっても、意思解釈上、法律行為の内容とされたものと認められない限り、表意者の意思表示に要素の錯誤はないと判断されます。
本件において、信用保証協会が主債務者が反社会的勢力でないことを動機として表示していたかどうか、そしてその動機が保証契約の内容とされたかどうかが問題となります。
- 過去の判例の参照:
最高裁判所は、昭和37年12月25日及び平成元年9月14日の判例を参照し、動機が表示されても、それが契約の内容とされたものでない限り、意思表示の要素の錯誤には当たらないとの立場を示しています。
- 結論
この裁判では、信用保証協会が保証契約を結ぶ際に主債務者が反社会的勢力でないことを動機としていたとしても、その動機が保証契約の内容として認識されていなければ、保証契約の意思表示に要素の錯誤はないとされました。
そのため、保証契約の無効を主張することはできないという判断がなされています。
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