民法213条の囲繞地通行権の対象地の特定承継と当該通行権の帰すう
(平成2年11月20日最高裁)
事件番号 昭和61(オ)181
この裁判では、民法213条に基づく囲繞地通行権の対象地に特定承継(所有権の移転)が生じた場合、その通行権の帰すうについて最高裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の判断の要点
- 囲繞地通行権の継続性:
民法213条に基づく囲繞地通行権は、袋地(公路に通じない土地)が生じた場合に、その袋地の所有者が、その土地を囲む他の分割者の所有地(残余地)についてのみ通行権を有する。
囲繞地通行権は、残余地について特定承継(第三者への譲渡)が生じた場合でも消滅するものではない。
したがって、袋地の所有者は、引き続き残余地に対して通行権を主張することができる。
- 通行権の対象地の制限:
袋地の所有者は、残余地に対してのみ通行権を有し、民法210条に基づいて残余地以外の囲繞地(他の隣接地)を通行する権利は認められない。
- 物権的負担の性質:
民法213条の囲繞地通行権は、袋地に付着した物権的な権利であり、残余地自体に課せられた物権的負担と解される。
このため、対人的な権利ではなく、土地に対する権利としての性質を有している。
- 不合理な結果を避けるための解釈:
残余地の所有者が残余地を第三者に譲渡した場合、囲繞地通行権が消滅すると解することは、袋地所有者が偶然の事情によって法的保護を失うという不合理な結果をもたらす。
このような結果は公平でないため、囲繞地通行権は特定承継によって消滅しないと解するのが相当である。
- 公平な権利の確保:
残余地以外の囲繞地を通行することを認めると、その所有者に不測の不利益が生じるため、妥当ではない。従って、通行権は残余地に限定される。
- 結論
最高裁判所は、民法213条の囲繞地通行権は残余地の特定承継によって消滅せず、袋地所有者は依然として残余地に対する通行権を有するが、残余地以外の囲繞地を通行する権利はないと判断しました。
この解釈は、袋地所有者の法的保護を確保し、無関係の第三者に不利益が及ぶことを防ぐためのものです。
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