譲渡担保権者が被担保債権の弁済期後に目的不動産を譲渡した場合における受戻しの許否
(平成6年2月22日最高裁)
事件番号 平成1(オ)23
この裁判では、譲渡担保権者が被担保債権の弁済期後に目的不動産を第三者に譲渡した場合における債務者の受戻しの可否について最高裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の判断の要点
- 目的物の処分権の取得:
不動産を目的とする譲渡担保契約において、債務者が弁済期に債務を弁済しない場合、債権者は譲渡担保契約が「帰属清算型」か「処分清算型」であるかにかかわらず、目的物を処分する権能を取得する。
したがって、債権者がこの権能に基づいて目的物を第三者に譲渡した場合、譲受人は原則として目的物の所有権を確定的に取得する。
- 債務者の受戻し権の消滅:
債務者は、清算金が存在する場合に限り、債権者に対してその支払いを求めることができるにすぎない。
債務者が残債務を弁済して目的物を受け戻すことはできなくなると解される。
- 第三者が背信的悪意者である場合の取り扱い:
譲渡を受けた第三者が背信的悪意者であったとしても、基本的には譲受人の所有権の確定的な取得に影響を及ぼさないとされる。
この解釈は、債権者が第三者の背信的悪意を確知し得る立場にあるとは限らないため、不測の損害を債権者が被ることを防止するためでもある。
- 事案の適用:
本件では、債務者(被上告人B)の最終弁済期後に、Dが本件建物を上告人に譲渡したため、被上告人Bは残債務を弁済して建物を受け戻すことができず、上告人がその所有権を確定的に取得したと認められる。
- 原審の判断の誤り:
原審の判断は、法令の解釈を誤っており、その違法は原判決の結論に影響を及ぼすものであると認められる。
- 結論
最高裁判所の見解では、譲渡担保権者が被担保債権の弁済期後に目的不動産を第三者に譲渡した場合、債務者がその不動産を受け戻す権利は消滅し、譲受人はその所有権を確定的に取得する。
この原則は、譲受人が背信的悪意者であっても例外とはならず、法的安定性と関係者の利益保護の観点からも妥当な解釈とされました。
コメントをお書きください