この裁判(平成5年10月19日最高裁判決、事件番号 平成1(オ)274)では、建物建築工事の請負契約における所有権の帰属について、以下のような見解が示されました。
最高裁判所の見解
- 元請負人と注文者の間の約定が優先される場合
建物建築工事の請負契約において、注文者と元請負人の間で、契約が中途で解除された際の出来形部分(工事が完了した部分)の所有権が注文者に帰属するという約定がある場合、契約が解除された時点で、その所有権は注文者に帰属することが原則となります。
- 下請負人の立場と所有権の主張
元請負人から工事を一括して請け負った下請負人が、自ら材料を提供して出来形部分を築造したとしても、注文者と下請負人との間に特段の合意がない限り、当該出来形部分の所有権は注文者に帰属すると解されます。
これは、下請契約が元請契約の存在とその内容を前提とし、下請負人は元請負人の債務を履行することを目的とするものであるためです。
- 下請負人の履行補助者としての立場
下請負人は、注文者との関係では元請負人の履行補助者的立場にあり、元請負人とは異なる権利関係を主張する立場にはないとされています。
したがって、下請負人は注文者に対して独自の所有権を主張することはできません。
- 判決の要点
この判決は、建築工事の契約における所有権の帰属に関して、元請負人と注文者の間で取り決められた約定が重視され、下請負人の所有権の主張が認められないという点を明確に示しています。
これは、契約の性質上、下請負人が元請負人の履行補助者にすぎないという立場から導かれるものです。
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