この裁判(平成29年5月10日最高裁、平成28(許)26)は、銀行が輸入業者の輸入する商品に対して信用状を発行し、譲渡担保権を設定した場合において、輸入業者がその商品を直接占有していなくても、占有改定の方法によりその引渡しを受けたものと認められるかどうかが争われました。
最高裁判所の見解では、以下の点が重要とされました。
- 輸入取引の一般的な実情:
輸入業者が輸入商品を直接占有することなく、委託を受けた海貨業者が受領等を行い、輸入業者が転売することが一般的であるという事実が考慮されました。
- 占有改定による引渡しの認定:
抗告人(輸入業者)と銀行の間で、信用状の発行により保証債務を負担する商品について、銀行が譲渡担保権を設定する際、抗告人にその商品の受領や処分等の権限を与える合意があったことが認定されました。
この合意に基づき、海貨業者が商品の受領を行っているため、銀行は占有改定の方法によって商品の引渡しを受けたと判断されました。
- 物上代位権の行使:
この判断に基づき、銀行は輸入業者に再生手続が開始された場合でも、譲渡担保権を別除権として行使できるとされ、さらにその譲渡担保権に基づく物上代位権の行使として、転売代金債権を差し押さえることが可能であるとされました。
したがって、このケースでは、占有改定の方法による引渡しが認められ、銀行が担保権を行使する権利が維持されるという結論に至りました。
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