この裁判(昭和28年12月18日最高裁、昭和25(オ)271)は、契約が解除された場合における填補賠償額(契約解除に伴う損害賠償額)の算定に関する標準時期についての最高裁判所の見解に関するものです。
最高裁判所の見解
- 売買契約の解除と損害賠償請求権の発生:
本件のように、売主が売買契約の目的物を引き渡さないために契約が解除された場合、買主は解除の時点までは目的物の給付請求権を持ちます。
契約が解除された時点で、買主はこの給付請求権を失うと同時に、それに代わる損害賠償請求権を取得することになります。
一方で、売主は解除の時点までは目的物を引き渡す義務を負い、契約が解除されることによってこの義務から解放されると同時に、代わりに損害賠償義務を負うことになります。
- 損害賠償額の算定基準:
契約が解除された場合において、買主が受けるべき損害賠償の額(履行に代わる賠償額)は、「解除当時における目的物の時価」を基準として算定されるべきとされています。
これにより、損害賠償額の算定にあたっては「履行期における時価」ではなく、「解除当時の時価」を基準とすることが適当であると判断されています。
理由
- 解除の時点を基準とする理由:
契約解除によって、買主の目的物の給付請求権が損害賠償請求権に変わることから、解除の時点が基準となるのが妥当とされています。
解除時点で、買主が受けるべき利益が具体化し、売主の義務も損害賠償へと転換されるため、その時点の時価で損害額を算定することが合理的です。
- まとめ
この判決により、契約が解除された場合の填補賠償額の算定においては、「解除当時の時価」を基準とすることが確認されました。
この基準は、解除の時点での状況を考慮し、公正な損害賠償額の決定に寄与するものと理解されています。
コメントをお書きください