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土地の賃貸借契約における賃貸人の地位の譲渡について

 昭和46年4月23日の最高裁判決(事件番号 昭和45(オ)46)では、賃貸土地の所有者がその所有権とともに賃貸人としての地位を譲渡する場合に、賃借人の承諾が必要かどうかについての判断が示されました。

 

最高裁判所の見解

 

 最高裁判所は、土地の賃貸借契約における賃貸人の地位の譲渡について、次のような見解を示しました。

  • 賃貸人の地位の譲渡と義務の移転:

 賃貸人の地位の譲渡は、賃貸人の義務の移転を伴いますが、賃貸人の義務は賃貸人が誰であるかによって履行方法が特に異なるものではないとされました。

  • 新所有者への義務の承継の有利性:

 土地の所有権の移転があった際、新しい所有者に賃貸人としての義務の承継を認めることは、賃借人にとって有利である場合が多いと考えられます。

 

 このため、一般的な債務の引受けの場合と異なり、賃借人の承諾を必要としないとされました。

  • 賃借人の承諾の要否:

 特段の事情がない限り、新所有者が旧所有者の賃貸人としての権利義務を承継するには、賃借人の承諾は必要ありません。

 

 旧所有者と新所有者の間の契約によって、これを行うことができると解されます。

  • 結論

 この判決において、最高裁判所は、土地の賃貸借契約における賃貸人の地位の譲渡に際し、賃借人の承諾が必要ではないと判断しました。

 

 賃貸人の義務は賃貸人が誰であっても変わらないため、特段の事情がない限り、旧所有者と新所有者間の契約だけで譲渡が成立すると解されます。