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共同相続した場合における無権代理行為の効力

無権代理人が本人を共同相続した場合における無権代理行為の効力

 (平成5年1月21日最高裁)

 事件番号  昭和63(オ)1733

 

 この裁判では、「無権代理人が本人を共同相続した場合における無権代理行為の効力」についての最高裁判所の見解が示されました。

 

 最高裁判所の見解

 

  • 無権代理人が本人を共同相続した場合の追認権の性質:

 無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合、無権代理行為を追認する権利は、その性質上、相続人全員に不可分的に帰属します。

 

 つまり、無権代理行為を追認するためには、全ての共同相続人が共同してこれを行使しなければなりません。

 

 無権代理行為の追認は、本人に対して効力を生じていなかった法律行為を、本人に対する関係において有効にする効果を持つため、全ての共同相続人が共同して追認しなければ、無権代理行為は有効とならないとされています。

 

  • 追認の拒絶と信義則について:

 他の共同相続人全員が無権代理行為の追認をしている場合、無権代理人が追認を拒絶することは信義則上許されないとしています。

 

 しかし、他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は無権代理人の相続分に相当する部分についても、当然には有効とならないとされています。

 

  • 金銭債務の連帯保証契約の場合についても同様の判断:

 上記の見解は、無権代理行為が金銭債務の連帯保証契約に関するものである場合においても、同様に適用されるとしています。

 

 したがって、無権代理行為が金銭債務の連帯保証契約に関するものであっても、追認の要件や無効・有効の判断基準については変わりません。

 

  • 結論

 最高裁判所は、無権代理人が本人を共同相続した場合に、無権代理行為を追認するためには、全ての共同相続人が共同して追認を行う必要があると判断しました。

 

 他の共同相続人全員が追認をしていても、無権代理人が単独で追認を拒絶することは信義則に反する場合があるとしながらも、全員の追認がなければ、無権代理行為が有効とされることはないと結論付けています。

 

 この見解は、金銭債務の連帯保証契約における無権代理行為の場合にも同様に適用されます。