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条件の成就によって利益を受ける当事者が故意に

 条件の成就によって利益を受ける当事者が故意に条件を成就させたときと民法130条の類推適用

  (平成6年5月31日最高裁)

  事件番号  平成2(オ)295

 

 この裁判では、「条件の成就によって利益を受ける当事者が故意に条件を成就させた場合」と「民法130条の類推適用」について最高裁判所が見解を示しました。

 

 最高裁判所の見解

 

  • 事実関係と行為の評価:

 被上告人BがDに櫛歯ピン付き部分かつらを販売した行為は、本件和解条項第1項に違反する行為とみなされる可能性があることは否定できません。

 

 しかし、上告人は単に和解条項違反行為の有無を調査・確認する範囲を超え、Dを介して被上告人Bを積極的に和解条項第1項に違反する行為をするように誘引したものと認定されました。

 

  • 故意に条件を成就させたと認める理由:

 上告人は、和解条項に基づく条件の成就によって利益を受ける当事者です。

 

 上告人が故意にその条件を成就させた行為は、民法130条の類推適用の対象となります。

 

 民法130条では、条件の成就によって利益を受ける当事者がその成就を妨げた場合、その条件は成就しなかったものとみなされます。

 

 逆に、利益を受ける当事者が故意に条件を成就させた場合についても、この条文の趣旨に照らし、類推適用するのが相当とされています。

 

  • 結論としての判断:

 本件では、上告人が故意に条件を成就させた行為が認定されたため、民法130条の類推適用により、被上告人らにとっては「本件和解条項第2項の条件が成就していない」とみなすことができると解されました。

 

 つまり、上告人の行為により、和解条項の条件が成就したとみなされることはないとされたのです。

 

  • 解釈と意味

 この裁判の見解は、条件付きの契約や和解において、当事者が自らに有利な条件を意図的に成立させようとする行為が不正と見なされる場合、民法130条を類推適用して、その条件を成就していないと扱うことで、不公平を防ぐための法的な手段を示しています。

 

 この判断は、契約における誠実な履行義務と信義則の重要性を強調するものであり、条件付きの取引における公平性を維持するための法的基盤を提供しています。