(昭和51年7月8日最高裁判所判決、
事件番号:昭和49(オ)1073)
使用者(会社など)が被用者(従業員)の加害行為により損害を受けた場合や、被用者の行為により第三者に対して使用者が損害賠償責任を負った場合に、使用者がどの程度まで被用者に対して求償権を行使できるかについて、最高裁が見解を示しました。
- 最高裁判所の見解の要点:
求償権の行使に関する制限:
使用者は、被用者の加害行為によって直接損害を被った場合や、使用者として損害賠償責任を負った場合に、被用者に対して求償することができる。
しかし、その範囲は「損害の公平な分担」という見地から信義則上相当と認められる限度に限られる。
求償権行使の判断基準:
求償権の行使が信義則に照らして相当であるかどうかの判断には、次のような要素が考慮されるべきとされました:
- 事業の性格、規模、施設の状況
- 被用者の業務の内容や労働条件
- 被用者の勤務態度
- 加害行為の態様
- 加害行為の予防や損失の分散に関する使用者の配慮の程度
- その他の諸般の事情
この判決により、被用者に対する求償権の行使は、単に発生した損害の金額に応じて自動的に行使されるわけではなく、上記のようなさまざまな事情を総合的に考慮して判断されるべきであるという基準が示されました。
この判断は、労使間の公平な損害分担を促進し、過度な求償が行われないようにすることを目的としています。
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