昭和53年12月22日最高裁判所判決、
事件番号:昭和52(オ)844
土地賃借権の移転と敷金に関する敷金交付者の権利義務関係の承継の有無について、最高裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解の要点:
- 敷金契約の性質:
敷金契約は、賃借人または第三者が賃貸人に交付した敷金をもって、以下のような賃貸借契約に基づく債務を担保することを目的とします:
- 賃料債務
- 賃貸借終了後の土地明渡義務の履行までに生じる賃料額相当の損害金債務
- その他賃貸借契約により賃借人が賃貸人に対して負担する一切の債務
- 敷金契約は賃貸借に付随する契約ではあるものの、賃貸借契約とは別個の契約とされています。
賃借権の移転と敷金の承継について:
賃借権が旧賃借人から新賃借人に移転し、賃貸人がその移転を承諾した結果、旧賃借人が賃貸借関係から離脱した場合、敷金交付者の権利義務関係が新賃借人に承継されることはないと解されました。
以下のような特段の事情がない限り、敷金交付者は新賃借人の債務を担保する義務を負いません:
- 敷金交付者が賃貸人との間で、新賃借人の債務不履行を担保することを明示的に約束した場合
- 敷金返還請求権を新賃借人に譲渡した場合
これらの特段の事情がない限り、敷金交付者が新賃借人の負う新たな債務についてまで敷金を担保とする義務を負うのは、不当であるとされました。
敷金の差押えについての効力:
敷金交付者が敷金を新賃借人の債務不履行の担保とすることを約束したり、敷金返還請求権を譲渡した場合であっても、敷金返還請求権が国税の徴収のために国税徴収法に基づいてすでに差し押えられている場合には、その後の合意や譲渡によっても、差押えをした国に対抗することはできないとされました。
この裁判の意義:
最高裁の見解により、土地賃借権の移転が行われた場合の敷金に関する権利義務の承継については、新賃借人への自動的な承継を否定し、敷金交付者の予期に反する不利益を防止するための法的な枠組みが示されました。
また、敷金の返還請求権が国税の徴収のために差し押えられた場合の対抗力の限界も明確にされました。
コメントをお書きください