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差押債権者と債権譲受人との間の優劣について

 この裁判(平成5年3月30日最高裁判所判決、事件番号:昭和63(オ)1526)では、同一の債権について差押通知と確定日付のある譲渡通知の第三債務者への到達の先後関係が不明である場合における差押債権者と債権譲受人との間の優劣について、最高裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解の要点

  • 差押債権者と債権譲受人の優劣の決定基準:

 国税徴収法に基づく滞納処分としての債権差押えを行った者(差押債権者)と、同一債権の譲受人との間での優劣関係は、差押えの通知が第三債務者に送達された日時と、確定日付のある債権譲渡の通知がその第三債務者に到達した日時、または確定日付のある第三債務者の承諾の日時との先後によって決まるとされました。

 

  • 先後関係が不明な場合の取扱い:

 もし、差押え通知と譲渡通知の第三債務者への到達日時が不明であるために、その先後関係を確定できない場合には、これを同時に到達した場合と同様に扱うとしています。

 

 この場合、差押債権者と債権譲受人の間では、互いに相手に対して「自己が優先的地位にある債権者である」と主張することが許されない関係に立つと解されます。

 

  • 判決の意義

 この判決は、同一の債権に対する差押えと譲渡の通知が第三債務者に到達する場合において、その到達の先後関係が不明な場合の法的な取り扱いを明確にしました。

 

 具体的には、先後関係が不明な場合には両者を同時到達として扱い、いずれの債権者も相手に対して優先的な地位を主張することができないとし、差押えと譲渡の優劣を決する基準を明示しました。

 

  • 実務への影響

 この判決は、債権の差押えと譲渡が競合する場面で、第三債務者への通知の到達時点を重視し、その先後関係を明確にすることの重要性を強調しています。

 

 また、到達の先後関係が不明な場合には、どちらの債権者も優先的立場を主張できないという判断により、第三者に対する通知の厳密な管理や記録が必要であることを示唆しています。

 

 これにより、債権譲渡や差押えの手続きにおける実務上の注意点が明確にされました。