この裁判(平成3年4月2日最高裁判所判決、事件番号:昭和62(オ)526)では、敷地賃借権付き建物の売買における敷地の欠陥と売買目的物の隠れた瑕疵について、最高裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解の要点
- 敷地賃借権付き建物の売買における瑕疵の範囲:
建物とその敷地の賃借権が売買の目的となっている場合、その敷地において賃貸人が修繕義務を負うべき欠陥が売買契約当時に存在したとしても、売買の目的物に隠れた瑕疵があると認められるわけではありません。
- 賃借権の性質と敷地の欠陥:
この場合、売買の目的となるのは建物とその敷地そのものではなく、その敷地に対する賃借権です。
従って、敷地自体の面積不足、法的規制、使用方法の制限などの客観的な理由で賃借権が制約される場合には、賃借権自体に瑕疵があると解釈される余地はあります。
しかし、敷地の欠陥が賃貸人の修繕義務によって補完されるべきものである場合、その修繕を請求すべき相手は賃貸人であり、賃貸人に対する債権としての賃借権の欠陥とは言えません。
- 売買目的物における瑕疵の有無:
したがって、買主は、売買によって取得した賃借人としての地位に基づき、賃貸人に修繕義務の履行を請求することはできます。
また、賃貸借の目的物に隠れた瑕疵があるとして、賃貸人に対して瑕疵担保責任を追求することも可能です。
しかし、これをもって売買の目的物に瑕疵があるとは認められません。
- 債権の売買に関する例示:
この理論は、債権の売買において、債務の履行を担保するための債務者の資力の欠如が債権の瑕疵に当たらないことに対比することで説明されます。
すなわち、売主が当然に債務の履行について担保責任を負うものではないこと(民法569条参照)と同様の理論です。
- この判決の意義
この判決は、敷地賃借権付き建物の売買において、敷地そのものの欠陥が売買の目的物の瑕疵に該当するかどうかの基準を明確にしています。
具体的には、賃借権の対象である敷地の欠陥が賃貸人の修繕義務で補完可能なものである場合、その欠陥は売買の目的物(賃借権)の瑕疵とみなされないとしています。
これにより、賃貸借契約と売買契約のそれぞれの役割と責任範囲を区別し、賃借権における欠陥の評価についての法的な指針を提供しました。
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