この裁判(平成9年7月1日最高裁判決)は、契約に関して「事情変更の原則」が適用されるための要件について、最高裁判所が明確な基準を示しています。
1. 事情変更の原則の要件
事情変更の原則とは、契約締結後に予見できなかった重大な事情の変更が生じた場合に、契約の内容を変更または解除することが認められる法原則です。
この判決によると、事情変更の原則を適用するためには、以下の要件を満たす必要があります:
- 契約締結後の事情の変更が、当事者にとって予見できなかったものであること。
- その事情の変更が、当事者の責めに帰することのできない事由によって生じたものであること。
上記の「予見可能性」や「帰責事由」の有無については、契約締結当時の契約当事者の状況に基づいて判断すべきであること。
2. 自然災害や施設崩壊の場合の適用
判決では、自然の地形を変更してゴルフ場を造成したゴルフ場経営会社に関して、事情変更の原則の適用が問題となりました。
判決は、「ゴルフ場ののり面に崩壊が生じる可能性」について、ゴルフ場経営会社が「予見不可能であった」とは言えないと判断しました。
その理由として、ゴルフ場のような施設は自然の地形に手を加えて建設されたものであり、自然現象や人為的な原因による災害の可能性があることは、予見可能であると考えられるからです。
また、これらの危険に対する防災措置を講ずべき必要が生じることも、全く予見できない事柄とは言えないとしました。
3. この判例の意義
この判決は、事情変更の原則の適用についての厳格な基準を示しており、特に契約締結時の状況を重視することを明確にしています。
さらに、予見可能性と帰責事由の判断において、契約上の地位の譲渡があった場合でも、契約締結当時の当事者の状況を基準にすることを示しています。
また、自然災害などの予測不可能な事象についても、一定のリスク管理が求められることを強調しており、事業者が自己のリスクに備えるべきであるという考え方を反映しています。
結論
この判例は、契約当事者が契約締結後の事情の変更を理由に契約の変更や解除を主張する際の要件を明確化したものであり、特に自然災害や施設管理における予見可能性とリスク管理の責任についての基準を提供しています。
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