この裁判(平成9年1月28日最高裁、事件番号:平成6(オ)804)では、相続に関する不当な利益を目的としない遺言書の破棄や隠匿行為が、民法891条5号に規定される相続欠格事由に該当するかどうかが問題とされました。
最高裁判所の見解
相続に関する不当な利益を目的としない遺言書の破棄・隠匿行為について
相続人が被相続人の遺言書を破棄または隠匿した場合でも、その行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、その相続人は民法891条5号に定める相続欠格者には該当しないと解するのが相当であるとしました。
民法891条5号の趣旨
民法891条5号の趣旨は、遺言に関して著しく不当な干渉行為を行った相続人に対し、相続資格を失わせるという民事上の制裁を課すことにあります。
しかし、遺言書の破棄や隠匿行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでない場合、その行為を「著しく不当な干渉行為」とは評価できません。
このような場合、相続人となる資格を失わせるという厳しい制裁を課すことは、民法891条5号の趣旨に反すると判断されました。
- 裁判の結論
したがって、相続に関する不当な利益を目的としない遺言書の破棄または隠匿行為は、相続欠格事由に該当しないとする最高裁判所の見解に基づき、当該行為を行った相続人が相続権を失うことはないとされました。
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