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詐害行為取消権の対象となるかどうかについて

 この裁判(平成12年3月9日最高裁、事件番号:平成10(オ)560)では、離婚に伴う慰謝料を支払う旨の合意について、それが詐害行為取消権の対象となるかどうかについて裁判所が判断しました。

 

最高裁判所の見解

  • 離婚に伴う財産分与としての金銭給付の合意

 離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意がされた場合において、特段の事情があるときには、不相当に過大な部分について、その限度において詐害行為として取り消されるべきものと解するのが相当であるとしました。

 

  • 慰謝料支払の合意について

 離婚に伴う慰謝料を支払う旨の合意は、以下のような性質を持つとされています:

 

 配偶者の一方が、その有責行為(例:不貞行為や暴力など)およびそれによって離婚をやむなくされたことを理由として発生した損害賠償債務の存在を確認し、賠償額を確定してその支払いを約する行為である。

 新たに創設的に債務を負担するものではないため、一般的には詐害行為とはならない。

  • 慰謝料支払の名を借りた贈与契約等の場合

 しかしながら、当該配偶者が負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額の慰謝料を支払う旨の合意がされた場合、その合意のうち、損害賠償債務の額を超えた部分については、慰謝料支払の名を借りた金銭の贈与契約ないし、対価を欠いた新たな債務負担行為というべきである。

 

 そのため、このような場合には、その超過部分は詐害行為取消権の行使の対象となり得ると解されます。

 

  • 裁判の結論

 したがって、離婚に伴う慰謝料支払の合意が成立した場合でも、その支払額が相当な損害賠償債務の額を超える部分については、詐害行為取消権の対象となり得ると最高裁判所は判断しました。

 

 これにより、相手方の債権者は、詐害行為としてその超過部分の取消を請求することが可能となります。