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登記が行われるまでは排他的な権利変動

 この裁判(昭和39年3月6日最高裁、事件番号:昭和36(オ)338)では、不動産の遺贈と民法第177条の「第三者」について最高裁判所が判断しました。

 

最高裁判所の見解

  • 不動産の遺贈と贈与の類似性

 不動産の所有者がその不動産を他人に贈与しても、贈与の登記手続きが完了するまでは、完全に排他性のある権利変動が生じるわけではなく、贈与者は無権利者にはならないと解釈されます。

 

 遺贈もまた、遺言者の意思表示によって受遺者に財産権を与える行為であり、贈与と同様、登記が行われるまでは排他的な権利変動を生じさせません。

  • 民法第177条の適用

 民法第177条では、物権の得喪・変更について、登記を対抗要件として求めています。

 

 したがって、遺贈の場合も例外ではなく、不動産の二重譲渡などの場合と同様に、登記が物権変動の対抗要件となります。

  • 判決の要点

 最高裁は、不動産の遺贈についても、他の物権変動と同様に登記が対抗要件であると判断しました。

 

 したがって、遺贈が有効であっても、その不動産に関する登記がなされるまでは、受遺者は他の第三者に対してその所有権を主張することができないという結論を導いています。

 

 この判決は、不動産の遺贈についても登記が必要であることを明確に示し、受遺者の権利保護と第三者の予見可能性を両立させる法的枠組みを確認するものでした。