· 

遺留分権利者の減殺請求権の性質

 この裁判(昭和41年7月14日最高裁、事件番号:昭和40(オ)1084)では、遺留分権利者の減殺請求権の性質について最高裁判所が判断を示しました。

 

最高裁判所の見解

  • 減殺請求権の性質

 遺留分権利者が民法1031条に基づいて行う減殺請求権は形成権であるとされます。

 

 この権利の行使は、受贈者または受遺者に対する意思表示によってなされるものであり、必ずしも裁判上の請求を要するものではありません。

 

 一度その意思表示がなされると、法律上、当然に減殺の効力が生じると解されます。

  • 効力の確定と時効の適用

 そのため、遺留分権利者が相続の開始および減殺すべき遺贈の存在を知った時から1年以内に意思表示を行った場合、その意思表示によって減殺の効力が確定的に生じるとされています。

 

 さらに、一度効力が確定した減殺請求権については、民法1042条に定める消滅時効の適用を考える余地はないと判断されました。

  • 判決の要点

 最高裁は、遺留分権利者の減殺請求権について以下の点を明確にしました:

  • 減殺請求権は形成権であり、意思表示だけでその効力が生じる。
  • 裁判所への請求は必ずしも必要ではないため、意思表示を行った時点で効力が発生する。
  • 一旦効力が確定すれば、消滅時効の適用はない。

 この判決により、遺留分権利者が遺産の公平な分配を求める権利を保護し、その権利行使の簡便さと確実性が強調されました。