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遺留分減殺請求の対象となるかどうか

 

 この裁判(平成10年3月24日最高裁判決、事件番号 平成9(オ)2117)では、特別受益者への贈与が相続開始よりも相当以前に行われた場合に、遺留分減殺請求の対象となるかどうかが争われました。

 

最高裁判所の見解:

 

 民法903条1項に基づく特別受益者への贈与は、相続開始のかなり前に行われたものであっても、通常は遺留分算定の基礎となる財産に含まれます。

 

 民法1030条は遺留分減殺の対象となる贈与や遺贈についての要件を定めていますが、この要件を満たさない場合でも、特段の事情がない限り、遺留分減殺請求の対象と解するのが相当であるとしました。

  • 判決の理由:

 特別受益者への贈与が相続開始前に行われたものであっても、それを遺留分算定に含めない場合、遺留分が侵害された相続人が遺留分を確保できない事態が生じる可能性があります。

 

 これは遺留分制度の趣旨に反するため、時の経過による社会経済事情や相続人の個人的事情を考慮してもなお、遺留分減殺の対象とするべきだと結論づけています。

  • 裁判のポイント:

 特別受益者が過去に受けた贈与が長期間前のものであっても、それが遺留分を侵害する場合には、遺留分減殺請求の対象となることが確認されました。