この平成14年6月10日の最高裁判決(平成11(受)271)は、「相続させる」趣旨の遺言による不動産の取得と登記に関して重要な見解を示しています。
最高裁判所の見解
この判決では、特定の相続人に対して特定の不動産を「相続させる」趣旨の遺言があった場合、その遺言に基づいて相続人が何らの行為を要することなく、被相続人が死亡した時点でその不動産が直ちにその相続人に承継されるとされています。
この見解の要点は以下の通りです:
- 自動的な承継
「相続させる」趣旨の遺言がある場合、被相続人の死亡と同時に、その不動産は遺言で指定された相続人に自動的に承継されます。特別な手続きを要しません。
- 法定相続分との共通性
このような遺言による不動産の取得は、法定相続分や指定相続分による相続と本質的には異ならないとされています。
つまり、遺言があっても、その効果は法定相続に基づく取得と同様です。
- 登記の対抗要件
法定相続分や指定相続分で相続した不動産と同様に、相続による権利の取得については、登記がなくても第三者に対抗することが可能です。
ただし、実際に不動産の権利を主張し、第三者に対抗するためには、登記が必要となります。
- 意義と実務への影響
この判決の意義は、遺言による特定の不動産の承継が、法定相続分による不動産取得と同様に自動的に発生するという点にあります。
そのため、相続登記をしなくても不動産の取得が成立しますが、第三者に対抗するためには登記が必要であるため、遺言執行後は速やかに登記を行うことが推奨されます。
これは、遺言に基づいて相続人が承継した不動産に関して第三者との間でトラブルを避けるための重要な実務的なポイントです。
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