この昭和48年10月26日の最高裁判決(事件番号: 昭和45(オ)658)では、新旧会社間の法人格の同一性に関する信義則の適用について、重要な判断が示されました。
特に、新会社が旧会社の債務を免れる目的で設立された場合における、法人格の独立性の主張が信義則上許されるかどうかが争点となりました。
最高裁の判断
法人格の形式と実質最高裁は、株式会社が商法に基づき比較的容易に設立される点に注目し、新会社が旧会社の営業財産をそのまま流用し、商号、代表取締役、営業目的、従業員などが旧会社と同一である場合には、形式的には新会社であっても実質は旧会社と同一であると見なしました。
このようなケースでは、新旧両会社の設立が、旧会社の債務を免れるために行われた会社制度の乱用であると判断されました。
- 信義則の適用
旧会社の債務の履行を免れるために新会社を設立する行為は、会社法制度の乱用にあたり、この場合、会社側は取引の相手方に対して新旧両会社が別人格であることを信義則上主張できないとされました。
取引の相手方を惑わせ、債務履行請求を遅延させたり、余分な費用をかけさせるために新会社を設立した場合、会社側の主張は認められません。
- 債務履行請求の対象
このような状況下では、取引の相手方は、新旧両会社のいずれに対しても債務履行請求が可能であり、どちらの会社に対しても債務の履行を求めることができるとされています。
最高裁は、新旧両会社の法人格が形式的に異なるとしても、実質的に同一であれば、相手方の債権保護を優先すべきであるとしました。
- 参照判例
最高裁は、昭和44年2月27日の第一小法廷判決(事件番号: 昭和43(オ)877号)も参照し、類似の事例においても信義則が適用され、新旧両会社の実質的同一性が認められたことを強調しました。
この判決は、会社の法人格を濫用することによって債務から逃れようとする行為を制限し、取引の安全を保護するという趣旨に基づいています。
- 結論
この判決は、新会社が旧会社と法人格を異にしていても、実質的に同一であり、旧会社の債務を免れる目的で設立された場合には、信義則に基づいて新旧両会社が別人格であるとの主張を認めないという重要な原則を確立しました。
取引の相手方は、実質的な同一性を理由に新旧両会社に対して債務履行を請求できることが確認された判例です。
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