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特別背任における「共同正犯」の認定基準

 この事件(平成15年2月18日最高裁判決、事件番号平成12(あ)1163)は、住宅金融専門会社の融資担当者と不動産会社の代表取締役が共謀して行った不正な融資に関するものです。

 

 特に、融資担当者が実質的に破たん状態にある不動産会社に対して無担保で融資を行ったことが問題となりました。

 

最高裁の見解の要点:

 融資担当者(E)は、自身および不動産会社(B)の利益を目的として住宅金融専門会社(D社)に損害を与える行為を行っていた。

 

 不動産会社の代表取締役である被告人は、融資担当者が任務に違背していることや、会社が損害を被る可能性について十分に認識していた。

 

 代表取締役は、融資担当者が融資せざるを得ない状況を知りながら、それを利用して融資の手続きを進め、迂回融資の手順に協力した。

 

 結論として、被告人は融資担当者の行為に対して支配的な影響力を行使したわけではなかったが、融資担当者の任務違背や会社への損害に対する認識を持ちながら、その状況を利用して融資の実現に加担したため、特別背任行為の共同正犯として評価されると判断されました。

 

 この判決は、特別背任における「共同正犯」の認定基準として、単に実行行為者の行為に協力するだけでなく、高度の認識や共謀があった場合にも共同正犯が成立することを示しています。