この判例(平成15年12月9日最高裁)では、火災保険契約に附帯する地震保険契約に関する保険会社の情報提供・説明義務が問題とされました。
最高裁判所の見解の要点
- 地震保険の意思決定は財産的利益に関するもの:
地震保険に加入するかどうかの意思決定は、生命や身体といった人格的利益に関わるものではなく、財産的利益に関するものです。
したがって、保険会社側からの情報提供や説明に不十分な点があったとしても、特別な事情がない限り、それをもって違法行為と評価し、慰謝料請求権を認めることはできないとしています。
- 地震保険不加入確認欄の存在:
申込書には「地震保険は申し込みません」と記載された地震保険不加入意思確認欄があり、申込者が地震保険に加入しない場合にはその欄に押印をすることになっています。
この欄の存在により、申込者は以下の事実を理解できると考えられます:
- 火災保険とは別に地震保険が存在すること
- 火災保険と地震保険は別個の保険であり、火災保険に加入しても地震保険には加入していないこと
- この欄に押印をした場合には、地震保険に加入しないこと
- 情報提供の機会:
申込者は申込書に記載された情報を基に、保険会社に対し、火災保険と地震保険に関する詳細な情報(てん補範囲、地震免責条項、地震保険料など)を求める十分な機会があったと認定されました。
また、申込者は自らの意思で地震保険不加入確認欄に押印をし、その意味を理解していたことが推認されています。
- 意図的な情報秘匿はない:
保険会社側が申込者に対し、地震保険に関する情報を意図的に隠蔽した事実はないと認められています。
- 慰謝料請求は認められない:
これらの点から、仮に保険会社の情報提供や説明が不十分であったとしても、特段の事情が存在しないため、違法行為として慰謝料請求権の発生を認めることはできないと判断されました。
- 結論
この判例では、地震保険に関する保険会社の情報提供や説明に不十分な点があったとしても、申込者が地震保険不加入の意思を自ら確認し、特段の事情が存在しない場合には、保険会社に慰謝料の支払義務は生じないとされています。
したがって、申込者の損害賠償請求は認められず、保険会社の敗訴部分は破棄されました。
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