この裁判(平成9年11月13日最高裁判決、事件番号平成6(オ)1883)では、期間の定めのある建物賃貸借契約の更新と保証人の責任について最高裁判所が見解を示しました。
主な内容は以下の通りです。
1. 建物賃貸借契約の継続性
建物賃貸借契約は、一時使用のための賃貸借を除き、長期間にわたる継続的な契約であるため、賃貸人は自ら建物を使用する正当な理由がなければ更新を拒むことができません。
したがって、賃借人が契約の更新を望む限り、賃貸借関係は継続されるのが通常です。
2. 保証人の予測可能性
このような継続的な賃貸借関係は、保証人にとっても賃貸借関係が更新されることは予測可能です。
また、保証の対象となる債務は、定期的かつ金額が確定している賃料債務が中心であるため、保証人にとって予期しない責任が急に発生することは一般的にありません。
3. 更新後の保証人の責任
保証契約において、特段の事情がない限り、保証人は賃貸借契約が更新された場合にも更新後の賃借人の債務についても保証責任を負うと解されます。
これは、当事者の通常の合理的な意思に合致するものとされています。
4. 信義則による例外
ただし、賃借人が継続的に賃料の支払いを怠っているにもかかわらず、賃貸人が保証人に通知せず契約を更新させていた場合などでは、保証債務の履行請求が信義則に反するとして否定される可能性があります。
このような場合を除き、保証人は更新後の賃貸借契約から生じる債務についても責任を免れないという結論です。
- 結論
保証人が賃借人のために締結した保証契約では、特段の事情がない限り、賃貸借契約が更新された場合にも引き続き保証責任を負うものとされ、更新後の賃借人の債務についても保証債務の履行を請求されることが原則となります。
ただし
*東京高裁の平成25年4月24日判決では、「賃借人が賃料不払を続けながら、区営住宅賃貸建物を明け渡さない事態が生じた場合には、賃貸人は、保証人の支払債務が保証契約に即して、通常想定されるよりも著しく拡大することを防止するため、保証人との関係で、解除権等の賃貸人としての権利を、状況に応じて的確に行使すべき信義則上の義務を負うところ、賃貸人が権利行使を著しく遅滞したときは、著しい遅滞状態となった時点以降の賃料ないし賃料相当損害金の保証人に対する請求は、信義則に反し、権利の濫用として許されない」
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