間接正犯は、行為者が自ら手を下さずに他人を利用して犯罪を実行させた場合に成立する犯罪形態です。
間接正犯の基本的な考え方は、「他人の行為を支配することによって構成要件を実現する」点にあります。
この場合、行為者が犯罪の実行に直接関わっていなくても、その行為が犯罪の核心であり、事実上、犯罪を支配しているとみなされます。
間接正犯のポイント
- 行為支配説:
支配的な見解では、他人を支配することによって犯罪を実行する場合、間接正犯が成立します。
これが「行為支配説」と呼ばれる理論です。この場合、他者の行動は、行為者の支配の下にあるため、行為者が最終的な責任を負うことになります。
- 「道具として」利用する場合:
行為者が第三者を「道具」として利用して犯罪を行わせた場合、その行為者は間接正犯として責任を負います。
たとえば、幼い子供や意思能力が欠如している者に犯罪を行わせた場合、これが典型的な間接正犯の例です。
- 教唆との違い:
一方、利用された第三者が自らの意思を持ち、自律的な判断で犯罪を実行した場合、行為者は教唆犯としての責任を負います。
この場合、行為者は犯罪の実行を指示または促したにすぎず、直接的な支配はしていないとされます。
具体例
- 子供を利用した窃盗:
3歳の子供に命じて物を盗ませた場合、子供は自律的な意思を持って行動しているわけではないため、命令した者が間接正犯として窃盗罪に問われます。
- 暴力や脅迫による支配:
判例では、養女に対して暴力や脅迫を使い、意思を抑圧して窃盗を行わせた親が、窃盗の間接正犯として認められました。
- 郵便配達人を利用した殺人:
郵便配達人に毒物を配達させ、その毒物が受取人を殺害することになった場合、配達人は何も知らないため、毒物を送った者が殺人の間接正犯となります。
重要な判例
- 暴力や精神的圧力による自殺強要:
加害者が被害者に対して暴力や精神的圧力を加え、自殺に追い込んだ場合、被害者を「道具」として利用した殺人の間接正犯が成立します。
- 精神遅滞者に誤った情報を与えた場合:
知的障害者に誤信させて自殺させた場合、行為者はその者を利用した間接正犯として責任を負います。
このように、間接正犯は、行為者が直接行為を行わなくても、その支配によって犯罪を実現した場合に成立するため、非常に広範な適用が可能です。
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