詐欺罪・準詐欺罪・不作為による詐欺の構成要件と判例
1. 詐欺罪の構成要件(刑法246条)
詐欺罪は、人を欺いて財物や財産上の利益を不法に得る行為を処罰するものです。
構成要件を以下に解説します。
- 欺罔行為(ぎもうこうい):
人を騙す行為(嘘や虚偽)を指します。
詐欺罪では、この欺罔行為が必須です。
行為者が他人を欺くことによって、その人が誤解(錯誤)に陥る必要があります。
- 錯誤に基づく財物の交付:
被害者が騙された結果、財物や利益を自ら交付することが必要です。
詐欺罪では、あくまで被害者が自発的に財物を交付することが要件です。
- 財物取得と利得:
第1項で財物の取得が、そして第2項では財産上の利益を得ることが詐欺行為とされます。
第三者に財物や利益を得させても詐欺罪が成立します。
判例
- ラーメン屋の例:
代金を支払う意思がないのにラーメンを注文し、それを受け取った場合には詐欺罪が成立します。
欺罔行為により財物(ラーメン)を取得したことがポイントです。
2. 準詐欺罪の構成要件(刑法248条)
準詐欺罪は、未成年者や心神耗弱者のように判断能力が不十分な者に対して、その弱みに乗じて財物や利益を不法に得る行為を罰するものです。
- 知慮浅薄な者や心神耗弱者に対する行為:
相手が未成年者や心神耗弱者であり、その判断力の不足に乗じて行われることが要件です。
- 詐欺行為がない場合に適用:
詐欺罪との違いは、準詐欺罪では「騙す行為」が明確でない点です。
相手の判断力の弱さを利用して財物を得る場合に適用されます。
判例
未成年者からの財物の取得: 詐欺行為がなく、ただ単に未成年者の判断力の未熟さに乗じて財物を取得した場合は準詐欺罪が成立します。
3. 不作為による詐欺罪
不作為による詐欺は、積極的な欺罔行為を行わない場合でも詐欺罪が成立する例です。
例えば、以下のようなケースがあります。
- お釣りを多く受け取った場合:
店員が間違えて多くのお釣りを渡した際、故意にそのことを指摘せずに黙って持ち帰った場合です。
このような状況では、店員を欺いたとみなされ、不作為による詐欺罪が成立します。
判例
- 不作為による詐欺:
店員から多くのお釣りを受け取ったが、それに気づきながら返さなかった場合、これは不作為による詐欺罪に該当します。
もし自宅に帰ってから気づいた場合は、詐欺罪ではなく占有離脱物横領罪が問題となります。
重要ポイントまとめ
- 詐欺罪:
人を欺いて財物や利益を得る罪。欺罔行為と錯誤が要件。
- 準詐欺罪:
判断力が不十分な者に対して、その弱みに乗じて財物や利益を得る罪。詐欺行為がない場合に成立。
- 不作為による詐欺:
自ら積極的に騙す行為がなくても、義務を怠ることによって他者を欺いた場合にも詐欺罪が成立。
詐欺罪や準詐欺罪は「他人を欺くこと」が中心の犯罪であり、その欺罔行為によって他人が財物や利益を失うことが成立の要件となります。
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