遺失物等横領罪(占有離脱物横領罪)の解説
刑法第254条は、「遺失物等横領罪」として、他人の占有を離れた物を横領した者に対して処罰を規定しています。
これには、遺失物(落とし物)や漂流物、その他占有を離れた他人の物が含まれます。この罪は、一般に「占有離脱物横領罪」とも呼ばれます。
遺失物等横領罪の構成要件
- 他人の物であること
横領の対象となる物は他人のものであり、自分の所有物ではないことが前提です。
- 占有を離れた状態であること
窃盗罪との違いは、物が所有者または管理者の「占有を離れた状態」にある点です。
つまり、所有者がその物を支配できない状況であることが要件です。
たとえば、落とし物や置き忘れた物が該当します。
- 横領の意思(不法領得の意思)
横領とは、その物を自分のものとして使用・処分する意思を持つことです。
つまり、他人の物を拾って届けずに自分のものにしようとする意思が必要です。
- 処罰要件
この罪の処罰は、1年以下の懲役、10万円以下の罰金、または科料です。
- 判例・具体例での区別
遺失物等横領罪は、窃盗罪との違いが試験や法律問題でよく問われます。
違いは「占有」の有無にあります。
窃盗罪
窃盗罪は、被害者が占有している物を奪った場合に成立します。
たとえば、財布を持っている人から直接奪ったり、家の中の物を持ち出したりした場合です。
【窃盗罪となる例】
- 旅館に忘れられた財布を取る場合:
この財布は旅館の管理下にあるため、旅館主の占有を奪ったとされ窃盗罪が成立します。
- ゴルフ場でロストボールを拾う場合:
ゴルフ場の管理下にあるボールを取ることも窃盗に該当します。
- 殺人後に被害者の財物を奪った場合:
殺害直後であれば、被害者に占有があるとみなされ、窃盗罪が適用されます。
- 旅行中の家から物を持ち出した場合:
家の物は旅行中でも家人の占有下にあるとみなされ、窃盗罪となります。
占有離脱物横領罪(遺失物等横領罪)
これに対して、被害者がすでに占有を失っている物を拾って奪った場合は、占有離脱物横領罪が成立します。
【占有離脱物横領罪となる例】
- 電車内の網棚に忘れられたカバンを持ち去る場合:
電車内のカバンは、まだ鉄道会社が占有していない段階であれば、占有離脱物横領罪となります。
- 公園で死人の財布を奪う場合:
死者には占有がないため、被害者の占有を奪ったとはいえず、占有離脱物横領罪が成立します。
- 窃盗罪との違い
窃盗罪は被害者がまだ占有している物を奪う場合に成立しますが、占有離脱物横領罪は、被害者が占有を失った物を奪う点で異なります。
- まとめ
遺失物等横領罪は、落とし物や置き忘れた物、死者の財産など、所有者が占有を離れた状態にある物を横領した場合に成立します。
これに対して、窃盗罪は、所有者の占有下にある物を不法に取得した場合に成立します。この区別を理解しておくことで、法律問題での対応がしやすくなります。
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