横領罪・業務上横領罪の構成要件と判例の解説
1. 横領罪(刑法第252条)
横領罪は、他人の物を自分の管理下にある状態で不正に領得する場合に成立します。
主に「委託物横領罪」として扱われ、他人から委託を受けた物をその信頼関係を破って横領する行為が該当します。
構成要件
- 占有する他人の物:
横領の対象は他人の所有物で、占有とは物を事実上、または法律上の支配下に置くことを指します。
- 自己のために不法に領得:
物を自己の所有物のように扱う意思を持って不法に支配する行為です。これが「横領」に当たります。
例
例えば、友人から預かったお金をそのまま自分のために使った場合、これは「横領罪」となります。
この場合、占有は一時的に自分の手元にあるため、他人の物でも占有しているとみなされます。
判例
お金の使い込み:
ある人物が他人のために管理していたお金を自分のために使い込んだ場合、占有の立場にあったので横領罪が成立したと認められました。
2. 業務上横領罪(刑法第253条)
業務上横領罪は、職務や業務に関連して他人の物を占有し、それを不正に領得した場合に成立します。
この場合、刑は通常の横領罪よりも加重されます。
構成要件
- 業務上占有:
業務に従事する者がその業務上の信任に基づいて物を占有している状態が必要です。
- 自己のために不法に領得:
業務上預かっている財物を自己の利益のために使い込むなどの行為が横領に該当します。
例
会社の経理担当者が業務中に預かっていた会社の資金を自分の口座に振り込んで使ってしまった場合、これは業務上横領罪に該当します。
判例
- 経理担当者による業務上横領:
ある経理担当者が会社の資金を長期間にわたり自分のために使い込んだ事例では、会社の財産を管理する立場にあったため、業務上横領罪が成立し、重い刑が科されました。
3. 横領の「占有」とは?
横領罪における「占有」は、他人から物を預かっている状態を広く指し、法律的な支配権を含みます。
窃盗罪における占有は事実上の支配が必要ですが、横領罪では法律上の支配権を持っている場合でも「占有」に該当します。
事例:
例えば、AがBに不動産を売却したにもかかわらず、登記がまだAの名義のままであった場合、Aがその不動産をさらに第三者Cに売却したら、Aに横領罪が成立します。
4. 関連する判例
- 二重譲渡の横領罪:
AがBに土地を売却した後も登記をA名義のまま放置し、その後Cにも同じ土地を売却した場合、Aは横領罪が成立します。
さらに、その土地に抵当権を設定した場合も横領罪が成立し、裁判所は「二重の処分行為」も処罰できると判断しました。
「まとめ」
- 横領罪は他人の委託を受けた物を占有し、その信頼を裏切って自己のために領得する行為に成立します。
- 業務上横領罪は職務上の信頼を裏切って物を横領する場合に成立し、刑が加重されます。
- 占有は広く解釈され、物を事実上や法律上の支配下に置く行為が該当します。
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