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親族相盗例の内容

 「親族相盗例」(刑法第244条)は、特定の親族間で窃盗などの財産犯罪が発生した場合に、国家の刑罰権を直ちに行使することを避けるための特例です。

 この制度は、家族間の軽微な財産トラブルにおいて、法的な処罰よりも家庭内での解決を重視するために設けられています。

 

親族相盗例の内容

  • 刑の免除(第1項)

 配偶者、直系血族、同居の親族間で窃盗や詐欺などの財産犯罪を犯した場合、その刑罰が免除されます。

 ここでいう「直系血族」とは、親や子などの縦の血縁関係にある者を指します。

  • 親告罪(第2項)

 直系血族や配偶者以外の親族間で同様の犯罪が発生した場合は、被害者からの告訴がなければ、起訴できない「親告罪」となります。

 これは、親族間のトラブルが外部の介入なしに解決されることを優先するためです。

  • 共犯の適用除外(第3項)

 親族ではない共犯者が関与している場合、その共犯者には親族相盗例が適用されません。

 たとえば、子が友人と一緒に両親の財産を窃盗した場合、子は刑が免除される可能性がありますが、友人は通常の窃盗罪として処罰されます。

 

適用範囲の注意点

  • 内縁関係や認知されていない子:

 内縁関係にある者や認知されていない子は、法的には「配偶者」や「直系血族」に含まれないため、親族相盗例は適用されません。

  • 一時的な宿泊:

 親族が一時的に宿泊しているだけの場合は「同居の親族」とはみなされないため、親族相盗例は適用されません。

 

親族相盗例の準用

 親族相盗例は、窃盗罪だけでなく、詐欺罪、背任罪、恐喝罪、横領罪などの財産に関する犯罪にも適用されます。

 

 これにより、家族間の財産トラブルにおいて、国家による刑罰の介入を最小限にとどめることが可能となっています。

 

 この制度は、家族間での財産紛争を法的制裁に頼らずに解決するための考慮がなされていますが、第三者が関与する場合には例外が設けられています。