偽証罪と虚偽告訴罪の構成要件と判例解説
偽証罪の構成要件
偽証罪は、法律に基づいて証人が宣誓した後、虚偽の陳述を行った場合に成立する犯罪です。
刑法第169条に規定されており、国家の審判作用の信頼性と公正性を保護するために設けられています。
偽証罪の条文(刑法第169条)
成立要件:
法律により宣誓した証人が、虚偽の陳述をしたときに偽証罪が成立します。
刑罰:
3ヶ月以上10年以下の懲役
保護法益
国家の審判作用の安全:
裁判における証言の信頼性を守るための制度です。
虚偽の陳述とは
- 主観説(判例・通説):
虚偽の陳述とは、自己の記憶に反する陳述を指します。
この見解では、証人が自分の記憶に忠実に話していれば、その内容が客観的に間違っていても偽証罪には該当しません。
逆に、証人が自分の記憶に反して正しい内容を述べた場合、それは「虚偽の陳述」として偽証罪に該当します。
例:
証人が事件について曖昧な記憶を持っているにもかかわらず、確実だと思い込み、記憶に反する証言をした場合。
偽証罪の成立時期
偽証罪が成立するのは、尋問の陳述全体が終了したときです。
そのため、証言中に誤りを訂正すれば偽証罪は成立しません。
尋問が終了後に誤りを訂正した場合は、刑法170条に基づき、刑が減軽または免除される可能性があります。
判例
判例は基本的に主観説に基づいており、証人が自己の記憶に忠実な証言をした場合、たとえそれが事実と異なっていても偽証罪には問われません。
逆に、証人が記憶に反して事実に基づく証言をした場合、それは偽証罪となる可能性があります。
虚偽告訴罪の構成要件
虚偽告訴罪は、他人に刑事または懲戒処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴や申告を行った場合に成立する犯罪です。
刑法第172条に規定されています。
虚偽告訴罪の条文(刑法第172条)
成立要件:
他人に刑事または懲戒処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴や申告を行ったときに虚偽告訴罪が成立します。
刑罰:
3ヶ月以上10年以下の懲役
保護法益
- 国家の審判作用の安全:
捜査や裁判が虚偽の告訴によって誤らないようにするため。
- 被告訴者の私生活の平穏:
虚偽の告訴によって不当に処罰されたり社会的に影響を受けることから個人を守るため。
虚偽の告訴とは
- 虚偽告訴罪は客観的事実に基づく陳述を重視します。
そのため、主観とは異なっていても、客観的事実として正しい告訴を行った場合には、虚偽告訴罪は成立しません。
例: 甲がBに嫌がらせをするため、Bが犯人だと告訴したが、実際にBが犯人だった場合、甲には虚偽告訴罪は成立しません。
判例
虚偽告訴罪が成立するには、告訴者が意図的に虚偽の事実を捏造している必要があります。
誤解や不正確な記憶に基づく告訴であっても、故意がなければ虚偽告訴罪は成立しません。
成立時期
告訴状が捜査当局に受理された段階で虚偽告訴罪が成立します。
比較
偽証罪は、自己の記憶に反する陳述が対象で、主観に基づく虚偽の証言が問題となります。
虚偽告訴罪は、客観的事実に反する告訴が対象であり、意図的に虚偽の事実を作り出して他人を陥れる行為が処罰の対象です。
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