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犯人蔵匿(ぞうとく)罪・犯人隠避罪

 犯人蔵匿(ぞうとく)罪・犯人隠避罪の構成要件

 

 犯人蔵匿罪と犯人隠避罪は、犯罪者を隠したり逃走を助けたりする行為に対する罪です。

 これらの罪の目的は、捜査や裁判の公正性を保つことです。

 

犯人蔵匿罪・犯人隠避罪の条文(刑法第103条)

 

成立要件:

 「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」または「拘禁中に逃走した者」を蔵匿または隠避させる行為があると成立します。

  • 蔵匿:

 犯人を物理的に隠す行為。

 具体的には、犯人に隠れる場所を提供したり、犯人を自宅にかくまうなどの行為が該当します。

  • 隠避:

 犯人を逃がしたり、捜査の妨害をして犯人を隠すことを意味します。

 例えば、嘘の情報を警察に伝えるなどの行為が含まれます。

 

客体(対象となる人物)

「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」:

 罰金以上の刑が科される犯罪を犯した者です。

 

「拘禁中に逃走した者」:

 すでに拘束されている状態から逃げ出した者も対象です。

 

重要ポイント

 犯人が自ら身を隠す行為は、犯罪にはなりません。

 しかし、犯人が他人にかくまうよう依頼した場合、その他人が犯人隠避罪に問われる可能性があります。

 

 真犯人が逮捕された後に、他人が「私が本当の犯人です」と出頭し身代わりになった場合も、犯人隠避罪が成立します。

 

 裁判例でも、逮捕状が出ていた被疑者に逃走のための資金を渡したケースで、その被疑者が後で不起訴処分になったとしても、犯人隠避罪の成立を認めています

 

刑罰

 3年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

 

証拠隠滅罪の構成要件

 証拠隠滅罪は、刑事事件に関連する証拠を隠したり改ざんしたりする行為に対する罪です。

 

証拠隠滅罪の条文(刑法第104条)

 

成立要件:

 他人の刑事事件に関する証拠を隠滅、偽造、変造する行為、または偽造・変造した証拠を使用する行為が成立要件です。

隠滅:

 証拠を隠したり破壊したりして、捜査や裁判に使えなくすることです。

偽造:

 本来存在しない証拠を作り出すことです。

変造:

 既存の証拠を改ざんすることです。

 

客体(対象となる証拠)

 他人の刑事事件に関する証拠が対象です。

 自分自身の犯罪の証拠を隠す行為は、証拠隠滅罪には該当しません。

 

 刑事事件が対象であり、民事事件や懲戒事件に関する証拠隠滅は本罪の対象外です。

 

重要ポイント

 捜査が始まる前に証拠を隠した場合でも、証拠隠滅罪は成立します。

 自分自身の犯罪の証拠を隠す行為は罪に問われませんが、他人を教唆して自分の証拠を隠滅させた場合、その教唆した者が証拠隠滅罪に問われます。

 

刑罰

 3年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

 

刑法第105条:親族に対する特例

 犯人蔵匿罪や証拠隠滅罪について、刑法第105条では、犯人や逃走した者の親族がこれらの罪を犯した場合、刑が免除されることがあります。

 

 この規定は、親族が感情的に犯人を助けたくなる事情を考慮して設けられています。