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拘束力、公定力、そして自力執行力

 行政行為の効力には、拘束力、公定力、そして自力執行力の3つがあり、これらは行政行為がどのように効力を持ち、どのように実行されるかに関わっています。

 

 「拘束力」

 拘束力とは、行政行為が適法に行われた場合に、それに従う義務が発生するという効力です。

 行政行為が発動されると、対象となる個人や法人はその指示や命令に従わなければならないという法的な強制力を持ちます。

 

 例: 建築許可が下りた場合、その内容に従って建築を進めなければならない。

 

特徴:

  • 強制力:

 行政行為が適法であれば、対象者はそれに従わなければならない。

  • 法的な拘束:

 行政行為が確定すると、取り消しや変更がない限り、その行為に従うことが求められる。

 

 「公定力」

 公定力とは、違法な行政行為であっても、その行為が取り消されるまでは有効なものとして扱われる効力です。

 これは、法的安定性を保つために設けられた制度であり、行政行為が違法であるとしても、正当な手続きによる取り消しが行われるまではその効力を維持します。

 

 例: 違法な課税処分であっても、取り消されるまでは有効として取り扱われる。

 

特徴:

  • 安定性の確保:

 行政行為が即座に無効になると混乱が生じるため、取り消されるまでは有効として扱われる。

  • 取消訴訟が必要:

 違法な行政行為を無効にするためには、通常、取消訴訟を通じて法的な決定を受ける必要がある。

  • 重大かつ明白な違法:

 無効を主張するには、違法性が「重大」でかつ「明白」である必要があり、これが認められるのは極めて稀です。

 

 「自力執行力」

 自力執行力とは、行政庁が裁判所を介さずに自らの権限で、行政行為に基づく義務を強制的に実現する力です。

 行政目的を早期に達成するために、行政庁は裁判所の判断を待たずに強制執行を行うことができます。

 自力執行力を行使するには、法律の明確な規定が必要です。

 

 例: 税金を滞納した者に対して、裁判を経ずに財産の差押えを行う。

 

特徴:

  • 裁判所を介さない強制力:

 行政庁は、裁判を経ずに強制執行を行うことができるが、そのためには法律に基づく明確な権限が必要。

  • 法律の規定が必要:

 自力執行力は強力な力を持つため、法律の規定に基づいてのみ行使できる。例として、国税徴収法や行政代執行法がある。

 

まとめ

  • 拘束力:    行政行為の対象者は、適法な行政行為に従わなければならない。
  • 公定力:    違法な行政行為でも、正式に取り消されるまでは有効として扱われる。
  • 自力執行力:  行政庁は、裁判所を介さずに強制的に義務を実行させることができるが、これは法律に基づく規定が必要。

 これらの効力は、行政がどのように権限を行使し、法的な安定性を保ちながら実行力を発揮するかに関係しています。