ある相続税に関しての判例です。
非常に複雑で、相続税の節税策とその正当性に関わる重要な判断が含まれています。
以下に、要点を整理してみます。
「相続の概要」
- 相続開始日: H24.6.17
- 被相続人: 父(死亡時94歳、元社長)
- 相続人: 妻、長女、長男、二男、孫養子(二男の長男)
「不動産の概要」
甲不動産
- 購入時期: 相続開始の3年5ヶ月前
- 購入金額: 8億3,700万円
- 借入金額: 6億3,000万円
- 路線価評価額: 2億円
- 鑑定評価額: 7億5,400万円
乙不動産
- 購入時期: 相続開始の2年6ヶ月前
- 購入金額: 5億5,000万円
- 借入金額: 4億2,500万円
- 売却時期: 相続開始の9ヶ月後
- 売却金額: 5億1,500万円
- 路線価評価額: 1億3,366万円
- 鑑定評価額: 5億1,900万円
「税務処理と裁判経過」
- 相続税申告: H25.3.11 提出、課税価格2,826万円、相続税ゼロ
- 更正処分: H28.4.27、課税価格8億8,874万円、相続税2億4,049万円
「裁判結果」
- 国税不服審判所: H29.5.23 請求棄却
- 東京地裁: R2.11.12 納税者敗訴
- 東京高裁: R3.4.27 納税者敗訴
- 最高裁: R4.4.19 納税者敗訴
「判決のポイント」
最高裁判決は、相続税評価に関して次の点を確認しました:
- 平等原則:
路線価評価と鑑定評価の乖離がある場合でも、租税負担の公平を害するなら鑑定評価を採用することが相当。
- 合理的理由:
節税目的での不動産購入が、相続税負担を著しく軽減する場合は、評価通達に従わず、合理的な時価で評価するのが適切。
税理士の感想
- 対策のタイミング:
相続対策のスケジュールが遅すぎた可能性がある。
- 過度な節税:
節税対策が過度であったため、多くのコストが発生。
- 経済合理性の欠如:
相続税対策以外の経済的な理由が不足していた可能性が高い。
今後の影響
- 節税スキームの見直し:
銀行や不動産会社が提案するスキームの内容が変わる可能性がある。
- 税理士の業務:
相続開始前後の不動産購入に対する税務リスクの認識が重要になる。
評価方法の見直し
- 評価基準:
相続開始前3年間に購入した不動産、借入金の使用、経済的合理性などを基に評価方法を選定する必要がある。
このような事案では、節税対策が過度であると判断されると、税務署からの評価が厳しくなることがあります。
具体的な対策については、税理士や法律の専門家と相談しながら慎重に進めることが大切です。
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