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行政法における「行政計画」と「行政立法」

 行政法における「行政計画」と「行政立法」について、それぞれの概要を以下に説明します。

 

1. 行政計画

 行政計画とは、行政作用を行うために行政機関が策定する計画のことです。

 計画は、行政の目的を達成するために必要な手順や方針を定めたものです。

 

法的拘束力と法律の根拠

 法律の根拠がある計画と法律の根拠がない計画が存在します。

 計画が法的拘束力を持つ場合、計画の策定には法律の根拠が必要です。

  • 拘束力のある計画:

 この場合、計画は法律や規制を遵守しなければならないため、計画に基づいた行為や規制に違反した場合に法的なペナルティが課されることがあります。

  • 拘束力のない計画:

 これに対して、法的拘束力がない計画は、あくまで指針や目標であり、法的な強制力はありません。

 

訴訟対象としての行政計画

 かつての判例では、行政計画は行政内部の行為に過ぎないため、取消訴訟の対象にはならないとされていました。

 

 しかし、平成20年の最高裁判決では、土地区画整理事業計画に対して処分性を認め、取消訴訟が可能であると判断されました。

 この判例変更により、拘束力のある行政計画が取消訴訟の対象となることが明確になりました。

 

行政裁量と手続き

 行政計画の内容には専門性が求められ、行政機関の裁量が広く認められます。

 裁量が逸脱・濫用されることがないかについては、「裁量の逸脱・濫用の判断基準」によって裁判所が審査します。

 

 また、計画策定の手続きでは、民主的な統制を目的とした公聴会やパブリックインボルブメントといった国民参加の機会が設けられることが一般的です。

 

2. 行政立法

 行政立法とは、行政機関が法律の委任を受けて、または法律を執行するために制定する規則や命令のことを指します。

 具体的には、政令や省令などがあります。

 

法規命令と行政規則

  • 法規命令:

 国民の権利義務に関わる規定を含むものであり、さらに2つの種類に分かれます。

  • 委任命令:

 法律の委任を受けて制定されるもので、政令等に基づき罰則を定めることも可能です。

  • 執行命令:

 法律を執行するために制定される命令です。法律の施行に必要な細部を定める役割を果たします。

  • 行政規則:

 これは国民の権利義務に直接関わらない規則であり、行政内部の指示や手続きに関わる規定です。

 

法規命令の効力

  • 公定力なし:

 法規命令は行政庁の処分ではないため、公定力(その命令が一旦効力を発生すれば違法であっても効力が否定されない力)はありません。

 また、法規命令自体は取消訴訟の対象にはなりません。

  • 裁判所による審査:

 ただし、法規命令は法規としての性質を持つため、その適法性については裁判所が審査を行うことができます。

 これにより、行政立法は法律を具体化し、国民の権利義務に影響を与える重要な役割を担っていますが、その内容は裁判所の適法性審査の対象になる可能性があります。