行政手続法における「不利益処分」とは、行政機関が特定の個人や法人に対して、法令に基づき義務を課したり、権利を制限したりする処分を指します。
これは、個人や事業者にとって不利な結果をもたらす行為です。
具体例としては、許可の取り消し、事業の停止命令、金銭の納付命令などが該当します。
1. 不利益処分の定義(第2条第4号)
行政手続法第2条第4号では、不利益処分が次のように定義されています:
行政庁が法令に基づいて特定の者に対して義務を課す、または権利を制限する処分。
ただし、次のような処分は「不利益処分」に該当しません:
- 事実行為に関する処分
- 申請を基に行われる処分(例:許認可の拒否)
- 同意に基づく処分
- 許認可の基礎となる事実が消滅した場合の処分
2. 不利益処分の例
不利益処分の具体例としては、以下のものが挙げられます:
- 営業許可の取り消し: 飲食店や建設業の営業許可を取り消す処分
- 行政行為の中止命令: 違法な建築工事の中止命令
- 金銭の納付命令: 税金や罰金の支払い命令
3. 処分基準の設定(第12条)
行政庁が不利益処分を行う際には、処分の基準を定める努力義務が課されています。
これにより、処分の透明性と公平性を確保することが求められています。
行政庁は、できるだけ具体的な処分基準を定め、一般に公表するよう努めることが必要です。
これは「努力義務」であり、必ずしも法的に強制されるものではありませんが、透明性の観点から重要な規定です。
4. 不利益処分の理由提示と意見陳述の機会
行政庁が不利益処分を行う場合、原則としてその理由を提示する必要があります。
また、処分を行う前に、対象者に対して意見を述べる機会(意見陳述の手続き)を与えなければなりません。
この手続きにより、対象者が自身の立場を弁明し、処分の妥当性を検討する機会を得ます。
書面で処分が行われる場合には、その理由も書面で提示される必要があります。
ただし、緊急性がある場合など、差し迫った必要がある場合は、理由の提示が省略されることもあります。
5. 意見陳述の手続き
不利益処分の対象者に対しては、処分を行う前に意見陳述の手続きが必要です。
これは、行政庁が一方的に不利益処分を下すことを防ぐための重要な手続きであり、国民の権利を守るための手続保障の一環です。
不利益処分は個人や法人に大きな影響を与えるため、その手続きの適正さと透明性を確保することが、行政手続法の重要な目的の一つです。
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