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積水ハウス地面師事件

 「積水ハウス地面師事件」として知られる、日本で発生した大規模な不動産詐欺事件の一環です。 

 この事件の背景には、地面師と呼ばれる詐欺集団の巧妙な手口があり、彼らが本物の不動産所有者に成りすまし、大規模な不正取引を行ったことが焦点となっています。

 

「事件の概要」

  • 海老澤佐妃子の入院:

 主人公の海老澤佐妃子は、末期がんを患い、2017年2月13日に東京・広尾の日本赤十字社医療センターに入院します。

 彼女は延命治療も断っており、最終的に病院で治療を受ける状況となっていました。

 佐妃子がこのような状態であったことを地面師グループは把握しており、それを悪用し、不動産を不正に売却しようとします。

  • 詐欺の計画:

 地面師グループは、佐妃子になりすますために、彼女の偽造パスポートや印鑑証明を作成。

 特に2008年に作成されたパスポートの写真が詐欺に利用されました。

 この偽造書類は、不動産業者に持ち込まれ、佐妃子本人であるかのように見せかけて、取引が進められました。

 

「詐欺が露見するまでの経緯」

  • 町内会の証言:

 町内会の役員が語るところによれば、複数の不動産業者が偽佐妃子の写真を持ち歩き、本物かどうか確認をしていました。

 しかし、その写真は佐妃子とは全く似ておらず、地元の関係者が「全然違う」と指摘したことがきっかけで、何社かの業者は疑念を抱き始めます。

  • エレベーターでの会話:

 詐欺が露見した大きなきっかけの一つが、不動産会社の営業マンと偽佐妃子とのエレベーターでの会話でした。

 営業マンが茨城県の桜の美しさについて話しかけると、偽佐妃子は「私の田舎にも桜の綺麗なところがあるのよ」と返答。

 しかし、実際の佐妃子には田舎と呼べる場所はなく、東京五反田の旅館で育っていることが知られていました。

 この違和感が決定打となり、不動産会社は契約を寸前で回避します。

 

「積水ハウスの失敗」

  • 積水ハウスの判断ミス:

 他の不動産会社が不審に気付き契約を取りやめた中、積水ハウスだけが最終的に詐欺に引っかかってしまいました。

 この背景には、地面師グループが積水ハウスに取引を持ち込んだタイミングや、積水ハウスが取引の正当性を十分に確認できなかったことがあります。

  • 詐欺が拡大した理由:

 地面師グループの詐欺計画は当初、小規模な「融資詐欺」としてスタートしましたが、佐妃子の入院や地元の事情を巧みに利用し、結果的に取引総額70億円にも及ぶ「大規模地面師事件」に発展しました。

 詐欺集団は、偽造書類や偽佐妃子を用いて不動産取引を進め、最終的に積水ハウスをターゲットに詐欺を成功させました。

 

「名取兄弟の行動」

  • 相続権を持つ名取兄弟:

 佐妃子には、異母兄弟である名取弘人と名取㓛がいます。

 両親が別れた後、父親が他の女性との間に産ませた息子たちです。

 彼らは佐妃子の病状が悪化してから、彼女の財産に対する相続権を持つ立場にありました。

 名取兄弟は、事態を察知し2017年7月に相続手続きを完了すると同時に、地面師グループを相手取って民事訴訟を起こしました。

 

「詐欺事件の教訓」

 この事件は、不動産取引における確認プロセスの甘さや、詐欺集団の巧妙さが際立つケースです。 

 特に、高額な取引においては、書類の確認や本人確認がいかに重要かが強調されます。

 最終的に、積水ハウスはこの事件で大きな損害を被りましたが、他の不動産会社がいかにして詐欺を見破ったのかという点も興味深い要素です。

 

結論

 「積水ハウス地面師事件」は、地面師グループの詐欺がいかに大規模で巧妙だったかを示す一例です。

 事件は最終的に、70億円規模の詐欺事件へと発展し、多くの不動産業者を巻き込みましたが、幸運にもいくつかの業者は不審に気付き契約を回避しました。

 それに対し、積水ハウスは被害に遭い、大きな教訓を残す結果となりました。