役員等の任務懈怠責任について
1. 任務懈怠責任とは
取締役、監査役、会計参与、会計監査人、執行役などの役員は、その職務を怠った場合、会社に対して責任を負います。
この責任は、職務を適切に遂行しなかったことによって会社に損害が生じた場合に発生します。
複数の責任者がいる場合、彼らは連帯責任を負うことになります。
つまり、複数の責任者がいる場合、会社は誰に対しても全額の賠償を請求できるという意味です。
2. 利益相反取引・競業取引が行われた場合の責任
取締役や執行役が利益相反取引や競業取引を行い、任務を怠ったことで会社に損害が生じた場合、得た利益の額を会社の損害額と推定します。
これは、会社側が具体的な損害額を立証するのを容易にするための規定です。
推定される額よりも多い損害が発生した場合、会社はその額に基づいて損害賠償を請求することができます。
連帯責任が適用されるため、責任を負う者が複数いれば、彼ら全員が損害を連帯して賠償します。
3. 第三者に対する責任
役員が悪意または重大な過失で職務を行った場合、第三者に損害が発生した場合でも、役員はその損害に対して連帯責任を負います。
これは、会社に限らず、取引先や他の利害関係者に対しても責任を負うことを意味します。
4. 任務懈怠責任の免除・一部免除
役員の任務懈怠責任には、免除や一部免除が可能な場合があります。
総株主の同意があれば、責任の免除が可能です。
役員が善意無過失で職務を行った場合、以下の方法で責任の一部免除が可能です。
- 株主総会の特別決議(会社法第425条)
- 定款の定めに基づく取締役の決議や同意(会社法第426条)
- 責任限定契約(会社法第427条)による限定
ただし、自己の利益のために会社と直接利益相反取引をした場合、無過失責任が適用され、責任の免除や一部免除は認められません。
まとめ
役員等の任務懈怠責任は、会社の損害を防ぐための重要な制度です。
役員が適切な職務を行わなかった場合、損害に対して責任を負い、特定の場合には免除や限定が可能ですが、悪質な利益相反取引などでは免除されないことがあるため、役員の行動には常に慎重な判断が求められます。
コメントをお書きください