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受益者とは?信託財産から利益を得る中心的存在

 受益者とは?

  信託財産から利益を得る中心的存在

 

 受益者とは、信託において、信託財産から経済的な利益を受け取る権利(受益権)を持つ者のことをいいます。

 信託契約の設計において、受益者は委託者によって指定されるのが原則です。

 信託は委託者・受託者・受益者の三者構成で成り立ちますが、その中で受益者は、信託の最終的な恩恵を受ける立場にあります。

 

● 受益者になるための手続きは不要

 受益者は、原則として自ら「受けます」と意思表示しなくても自動的に受益権を取得します(黙示的な取得)。

 ただし、信託契約に「受益者の同意があったときに効力が生じる」といった条件が記載されていれば、その条件に従います。

 

● 受益者になれるのは誰か

 受益者には個人・法人を問わず、以下のような存在がなることができます。

  • 委託者本人(自益信託の場合)
  • 委託者以外の家族や親族
  • 法人(会社や団体、組合など)
  • 権利能力を持たない社団(例:町内会など)

 また、胎児や将来生まれる子や孫などの未存在者でも受益者に指定することが可能です。

 

● 複数人で受益することも可能

 受益者は複数でも問題なく、「同時に複数人が受益する(準共有)」形式のほか、「異なる時点で順番に受益権を取得する(受益者連続型)」という形も可能です。

 たとえば、「親が生きている間は親が受益者となり、亡くなったら長男に切り替わる」というような世代を超えた受益設計が可能です。

 これにより、従来の民法上では実現できなかった、二次相続・三次相続に向けた資産承継の指定ができるという点が、家族信託の大きな利点です。

 

● 受益者の権利と保護

 受益者は、信託財産からの利益を受けるだけでなく、受託者に対して管理状況を報告させたり、信託の内容に異議を唱える権利を持っています。

 受益者の権利を実効的に保護するために、信託監督人や受益者代理人といった制度も併用されることがあります。

 このように、受益者は信託制度の「恩恵を受ける主役」でありながら、その存在のあり方や指定の仕方によって、信託全体の設計に大きな影響を与える要素となります。

 信託契約を組む際には、受益者の人選とそのタイミング、配分方法を慎重に設計することが重要です。