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支払督促とは

 支払督促とは、金銭、代替物、または有価証券の一定数量の給付を目的とする請求に対して、簡単かつ迅速に債務名義を取得するための手続きです。

 

 この手続きは、裁判所の判断を必要とせず、債権者の申立てに基づいて裁判所書記官が一方的に発行するもので、貸金業者や信販会社などが債権回収の手段としてよく利用しています。

 

「支払督促の基本的な流れ」

  • 債権者が申立て:

 債権者は、債務者の普通裁判籍(通常は住所地)の所在地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対して、支払督促の申立てを行います。申立ては書面で行いますが、必ずしも形式にこだわる必要はありません。

  • 支払督促の発行:

 裁判所書記官は、証拠を調べたり債務者を聴取することなく、債権者の申立てに基づいて支払督促を発行します。

 これは、債権者の言い分をそのまま認めた形で行われます。

  • 債務者への送達:

 支払督促は債務者に送達されますが、債権者には通知のみが行われます。

 債務者が支払督促に異議がある場合は、督促異議を申し立てることができます。

  • 督促異議の申立て:

 債務者は、支払督促が送達されてから2週間以内に異議を申し立てることができます。

 異議が申し立てられると、支払督促は失効し、通常の訴訟手続きに移行します。

  • 仮執行宣言の申立て:

 債務者が督促異議を申立てず、2週間が経過した場合、債権者は30日以内に仮執行宣言を付すように申立てることができます。

 仮執行宣言が付された支払督促は、強制執行のための債務名義として機能します。

 

 

「仮執行宣言付支払督促」

 仮執行宣言が付された支払督促は、確定判決と同じ効力を持ち、債権者はこれに基づいて強制執行を行うことができます。

 

 債務者が仮執行宣言付支払督促に異議を申し立てた場合、訴訟手続きに移行しますが、支払督促自体が失効するわけではなく、訴訟によって債権の正当性が争われます。

 

「支払督促の要点」

  • 管轄:

 支払督促は簡易裁判所の裁判所書記官に対して申立てます。試験対策では「簡易裁判所」ではなく「裁判所書記官」である点に注意が必要です。

  • 審尋なし:

 支払督促は債務者の審尋(審問)を行わずに発せられます。そのため、債務者にとってはいきなり裁判所から督促が送られてくる形になります。

  • 仮執行宣言:

 債権者は、督促異議がなければ仮執行宣言を申立てて債務名義を取得し、強制執行が可能になります。

 

 支払督促は、手続きの簡略さと迅速性が特徴であり、特に債権者にとって有利な制度です。

 ただし、債務者側にも異議を申し立てる機会があり、その場合は通常の訴訟手続きに移行します。