不当執行と違法執行について、そしてそれらに対する不服申立て手続き(執行抗告と執行異議)の概要です。
1. 不当執行と違法執行の違い
- 不当執行:
執行法上は適法であっても、実体法上の根拠が不足している場合を指します。
具体例としては、債権が消滅しているにもかかわらず、誤って差し押さえを行う場合などが該当します。
- 違法執行:
現実の執行行為が手続法規に違反して行われることを指します。
例えば、執行手続の期間が過ぎているのに差し押さえを行った場合や、手続きにおいて裁判所の許可が必要なのにそれを得ずに行った場合などです。
2. 不当執行に対する不服申立て方法
- 請求異議の訴え:
債務者が、執行が不当であることを主張して、その執行の停止や取り消しを求めるものです。
- 第三者異議の訴え:
執行手続の対象となっている財産が第三者(債務者でない者)の所有である場合、第三者がその財産の差し押さえを解除することを求めて行う訴えです。
3. 違法執行に対する不服申立て方法
- 執行抗告:
民事執行手続に関する裁判(例: 執行取消しの決定)に対する不服申立てです。
特定の裁判に対してのみ認められ、原裁判所に抗告状を提出して行います(高等裁判所に事件が送付されます)。
執行抗告をしても執行の停止効力はありません。
抗告理由は、抗告状提出日から1週間以内に提出する必要があります。
- 執行異議:
執行裁判所の執行処分に対して、執行抗告できない場合や、執行官の執行処分に対して行います。
申立期間の制限はなく、利益がある限りいつでも異議の申立てが可能です。
執行異議にも執行の停止効力はありません。
4. 執行抗告の具体例
執行抗告が認められる場合は、例えば以下のようなケースがあります:
- 民事執行の手続を取消す決定:
例えば、誤った前提で行われた執行手続の取消し。
- 執行官に民事執行の手続きを命ずる決定:
執行官に対して不当な指示が出された場合など。
5. 執行異議の具体例
執行異議は、例えば以下の場合に適用されます:
- 執行官の処分が、違法または不適当である場合。
- 執行官が執行を遅滞している場合。
これらの手続は、執行行為に対して適切な異議を申し立て、法的な手続きを是正するための手段です。
事例に応じて適切な手続きを選択し、主張を行うことが重要です。
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