金銭や動産の引渡しを目的とする債権に対する強制執行、いわゆる「債権執行」について、以下に要点を整理します。
1. 債権執行の開始と管轄
債権執行は、執行裁判所の差押え命令によって開始されます。
動産執行の目的となる有価証券が発行されている債権を除き、金銭の支払いや動産の引渡しを目的とする債権が対象です。
管轄裁判所は、以下の通りです:
- 債務者の普通裁判籍(通常の住所地)を管轄する地方裁判所。
- 債務者の普通裁判籍がない場合、差し押さえるべき債権の所在地を管轄する地方裁判所。
債権執行は、執行裁判所が執行機関となります。
2. 差押命令の手続きと効力
差押命令は、債務者および第三債務者(債務者に対して債務を負う者)を審尋(尋ねること)せずに発せられます。
差押命令の効力は、第三債務者に送達された時点で発生し、債務者および第三債務者に対して送達されなければなりません。
差押命令が却下された場合などに、執行抗告を行うことができます。
3. 差押命令の送達と第三債務者の対応
差押命令を送達する際に、債権者の申立てがあるときは、裁判所書記官は第三債務者に対し、差押命令の送達の日から2週間以内に、差押えに係る債権の存否、弁済の意思について陳述するように催告します。
4. 債務者の義務
差押えに係る債権について証書がある場合、債務者はその証書を差押債権者に引き渡さなければなりません。
5. 債権の取立てと制限
金銭債権を差し押さえた債権者は、差押命令が債務者に送達されてから1週間経過すると、その債権を取り立てることができます。
ただし、債権者は自身の債権および執行費用の額を超えて取立てや支払を受けることはできません。
6. 配当要求の条件
配当要求は、以下の者が行うことができます:
- 執行力のある債務名義の正本を有する債権者。
- 文書により先取特権を有することを証明した債権者。
7. 債権執行における配当等の対象債権者
配当を受けることができる債権者は、以下のタイミングまでに差押え、仮差押えの執行、または配当要求を行った者です:
- 第三債務者が供託をした時:
債務者または第三債務者が供託所に支払額を預けた場合。
- 取立訴訟の訴状が第三債務者に送達された時:
債権者が第三債務者に対して債権を取り立てるための訴訟を提起し、訴状が送達された場合。
- 売却命令により執行官が売得金の交付を受けた時:
執行官が差押物の売却により得られた金額を交付された場合。
- 動産引渡請求権の差押えの場合、執行官がその動産の引渡しを受けた時:
差押え対象が動産で、その引渡しを執行官が受けた場合。
債権執行は、複雑な手続きと規定が伴います。
債権者は、これらの手続きや規定を遵守し、適切に権利を行使する必要があります。
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