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請求異議の訴えと第三者異議の訴えの違い

 請求異議の訴えと第三者異議の訴えの違いについてです。

 それぞれの訴えの概要と特徴を整理し、さらに理解しやすい形でまとめます。

 

1. 請求異議の訴え(民事執行法 第35条)

  • 目的:

 債務者が、債務名義(例: 判決、和解調書、支払督促など)に基づく強制執行に対し、その執行を止めるための訴えです。

 特に、債務名義に係る請求権の存在や内容に異議がある場合に行います。

  • 典型的な例:

 判決が確定した後に債務を弁済したにもかかわらず、債権者がその事実を無視して強制執行を開始した場合などに、弁済を理由に執行の不許を求める。

  • 異議事由の制限:

 異議事由は、原則として「口頭弁論終結前」に発生した事由に限られます。

 判決確定後の事由(例えば、判決後に弁済した事実)でないと主張できません。

  • 対象外:

 仮執行宣言付きの判決や仮執行宣言付きの支払督促について、確定前のものは請求異議の対象にはなりません。

  • 異議の同時主張義務:

 債務者は、異議事由が複数ある場合は、全て同時に主張しなければなりません。

 後から追加の異議事由を主張することはできません。

  • 執行停止:

 請求異議の訴えの提起だけでは執行は停止しませんが、執行停止の申立てが可能です。

 この場合、裁判所は担保を立てることを条件に強制執行の停止を命じることがあります。

 

2. 第三者異議の訴え(民事執行法 第38条)

  • 目的:

 強制執行の対象となっている財産について、債務者以外の第三者が所有権その他の権利を有しており、その強制執行を排除するために行う訴えです。

 要するに、債務者の財産ではなく第三者の財産が強制執行の対象となった場合に、「その財産は私のものであり、執行を止めて欲しい」と主張する訴えです。

  • 典型的な例:

 債務者の家に住む家族の所有物(例えば、家族の車や家具)が差し押さえられた場合、その家族が「これは債務者の財産ではなく自分の財産だ」として差し押さえの解除を求める。

  • 管轄裁判所:

 強制執行が行われている執行裁判所が管轄します。

  • 効果:

 第三者異議の訴えは、強制執行の対象となっている特定の財産に対する執行を排除するものであり、債務名義自体の執行力を否定するものではありません。

 債権者は、第三者異議の訴えに敗訴しても、債務者の他の財産に対して強制執行を行うことができます。

 

3. 請求異議の訴えと第三者異議の訴えの違い

  • 請求異議の訴え:

 債務名義に基づく強制執行の不許を求める(請求権自体に異議)。

 債権者が敗訴した場合、その債務名義に基づいて同じ強制執行はできなくなります。

  • 第三者異議の訴え:

 特定の目的物に対する強制執行の排除を求める(所有権や譲渡妨害の権利)。

 債権者が敗訴しても、他の財産に対しては執行可能。

 

4. 手続の流れと注意点

 請求異議の訴えでは、異議事由を一度に全て主張しなければならず、執行停止を希望する場合は別途申立てが必要です。

 

 第三者異議の訴えは、第三者が自らの権利を主張し、具体的な所有権や譲渡妨害の権利を証明する必要があります。

 

 これらの違いを理解し、適切な不服申立てを行うことが重要です。

 どちらの訴えを用いるべきかは、状況や対象となる財産の所有者によって異なるので、慎重に判断する必要があります。