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取立訴訟と転付命令

 「取立訴訟」と「転付命令」に関する説明を、簡潔にまとめます。

 

 「取立訴訟」

 取立訴訟とは、差押債権者が第三債務者に対して、差し押さえた債権に係る給付を求める訴訟です。

  • 目的:

 差押えた債権の支払いを第三債務者に求める。

  • 手続きの簡略化:

 口頭弁論を経ずに訴訟を行うことができ、迅速に解決できる。

  • 共同訴訟人の参加:

 第三債務者は、他の債権者(他の差押え債権者)を共同訴訟人として原告に参加させることを申し立てることができる。

 これは、同じ債権について競合する差押えがある場合、紛争をまとめて解決するための手続きです。

 

 「転付命令」

 転付命令は、差押債権者の申立てに基づき、執行裁判所が第三債務者に対して支払いを命じる代わりに、差し押さえた金銭債権を差押債権者に「転付」することを命じる手続きです。

 以下がその要点です:

  • 目的:

 差押債権者が、第三債務者から直接弁済を受ける代わりに、その債権を差し押さえた債権者に移転させる(事実上の債権譲渡を行う)。

  • 効力発生要件:

 転付命令が確定して初めて効力が生じる。

 他の債権者が、転付命令に係る金銭債権について差押え、仮差押えの執行または配当要求をした場合、転付命令は効力を生じない。

  • 弁済とみなす効果:

 転付命令が確定し、第三債務者に送達された時点で、差押債権者の債権はその券面額で弁済されたとみなされる。

 これにより、第三債務者が無資力(支払い能力がない)であっても、差押債権者の債権は弁済されたことになります。

 

 無資力のリスクは、転付を受けた差押債権者が負担することになります。

 

まとめ

 取立訴訟は、迅速に債権回収を図るための訴訟手続きであり、競合する差押えがある場合に他の債権者も訴訟に参加させることができます。

 

 転付命令は、事実上の債権譲渡に相当し、第三債務者が無資力であっても、差押債権者の債権は弁済されたとみなされるが、そのリスクは転付を受けた債権者が負うことになります。

 

 これらの制度は、債権回収の手続きを効率化し、債権者の利益を保護するために設けられていますが、各手続きに伴うリスクや要件を理解することが重要です。