「保全命令」についての説明を以下にまとめます。
保全命令とは?
保全命令は、訴訟の本案の権利を確実に実現するために、迅速に債務者の財産に対して仮の措置を講じる手続きです。
主に以下の2つの種類があります:
- 仮差押え:
金銭債権の実現を保全するために、債務者の財産を差し押さえる手続き。
- 仮処分:
係争物の保全や仮の地位を定めるための手続き。
民事保全法の概要
民事保全法は、仮差押えや仮処分に関する手続きについて定めた法律です。
以下の特徴があります:
- 決定・命令による裁判:
民事保全の手続きは、決定または命令によって行われ、判決はありません。
- 口頭弁論の不要性:
民事保全の手続きは、原則として口頭弁論を経ずに行うことができます(任意的口頭弁論)。
- 理由の付記:
保全命令の決定には理由を付す必要がありますが、口頭弁論を経ない場合は、理由の要旨を示すだけで足ります。
保全命令の申立て
- 申立て要件:
保全命令の申立ては、保全すべき権利や権利関係、保全の必要性を明らかにする必要があります。
保全命令を申請する際は、「証明」ではなく「疎明」(軽度の証拠を示すこと)で足り、保全すべき権利と必要性を疎明する必要があります。
- 保全命令に対する抗告
保全抗告:
保全命令に対しては、送達を受けた日から2週間以内に保全抗告が可能です。
これは民事訴訟法の即時抗告や民事執行法の執行抗告の1週間と比べ、より厳格に扱われています。
- 裁判所の管轄
保全命令の事件は、本案の裁判所または、仮差押えや仮処分の対象物の所在地を管轄する地方裁判所が担当します。
特許権に関する訴えの場合は、本案の裁判所が管轄となりますが、仮差押えや係争物の所在地を管轄する裁判所も対応可能です。
重要なポイント
保全命令は、訴訟の本案の権利を確保するために行う「仮の措置」であり、最終的な権利関係の確定を目的とするものではありません。
保全命令の申立てには「保全すべき権利」「権利関係」「保全の必要性」の疎明が必要であり、これらを全て明らかにすることが求められます。
保全命令は、訴訟手続きの前段階として、迅速に権利を保全するために重要な役割を果たします。
そのため、手続きや要件をしっかり理解し、適切に活用することが必要です。
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